ここでは、西洋ミツバチを捕食する生物や天敵対策を紹介します。 西洋ミツバチに悪さをする菌類・ウイルス等もありますが、頻繁に感染することは無いのでここでは詳しい紹介を省きます。
アメリカフソ病とは、幼虫が変色し腐る病気の事です。とても危険な病気なので、最低限アメリカフソ病の症状だけはYOTUBEの動画を見て覚えておいてください(英語動画ですが映像を見れば分かります)。 アメリカフソ病の主な症状は、産卵圏の乱れと幼虫が茶色に溶ける事です。幼虫が茶色に溶けていたら、近くの保健所に直ぐに知らせて下さい。
蛹が白くなって巣箱外へ捨てられることをチョーク病と呼び、気温の寒暖差が激しい時によく見かけます。チョーク病は病気というより蜂児の保温不足から起きる生育不良のようです。チョーク病についてはこちらを参照してください。
捕食者対策の結論から述べますが、群が強い(蜂の数が多い)とオオスズメバチ・寄生ダニ(ミツバチヘギイタダニ)などの天敵生物を除いて被害は少なくなります。 したがって群を強くする事が一番の捕食者対策になります。
フソ病について詳しく調べた記事はこちら。
ゴキブリ 攻撃力: 特に害は無いが巣箱の周りに住み着くので気持ちが悪いです。動きがとても早いです。 |
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カエル 攻撃力:☆~ 近くに川などカエルが生息できる水源があると蜂を狙ってやってきます。 ハブがカエルを狙ってやってくるので厄介です。 カエルが養蜂場の周囲に沢山居る時は、草むらなどには入らない方が賢明です。 |
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ムカデ 攻撃力:☆☆☆ 巣箱の隙間に住み着き、小さな昆虫類を捕食します。時々、大量発生するので気持ち悪いです。 大きなムカデは鮮やかな赤や青色をしているので、見るだけで気持ち悪いです。 噛みつくので見つけたら注意が必要です。 |
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蜂にあまり害の無いアリ 攻撃力:☆ アリ単体では、攻撃力・防御力ともに低く弱い。数が少ない場合は見つけ次第、手で掃えば問題ない。 |
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アシジロヒラフシアリ等 攻撃力:☆☆☆☆ 一部のアリはミツバチに大きな脅威になります。アシジロヒラフシアリが養蜂場に住み着きスーパーコロニー化した場合、ミツバチが継続的に襲われどんどん群が弱っていきます。個人的にはヘギイタダニよりヤバい生物だと思います。 アシジロヒラフシアリは機動力があり、遠くからでも餌があれば短時間で大量に押し寄せてくるので油断できません。アリ駆除剤に対して耐性があるのも問題です。 日本ではあまり話題になりませんが、海外では攻撃性の高いアリが養蜂業に与える影響が大きそうです。 アリ対策はコチラを参考にして下さい。 |
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トリ 攻撃力:☆~ トリは、知能・防御力・機動力がずば抜けていて根本的な対策は無い。しかしトリにはミツバチが見えずらいらしく、大量に食われる事は少ない。他の害虫も食べてくれるので役に立つ事もある。 ただし、ツバメは脅威になるよです。 |
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トンボ系の虫 攻撃力:☆☆ トンボのように素早く動ける捕食系昆虫は、ミツバチを捕らえる事ができます。数が多いと厄介な生物です。 |
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カマキリ 攻撃力:☆ カマキリは移動速度が遅いので、ミツバチからすると殆ど脅威になりません。 |
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スムシ(成虫) 攻撃力: 巣に侵入して卵を産みつける。動きは遅いので見つけ次第潰そう。 |
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スムシ(幼虫) 攻撃力:☆ ミツバチが居ない所の巣を食い荒し巣をボロボロにします。しかし、西洋ミツバチはスムシに強く、巣を食われる以外の被害は出ません。 |
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クモ 攻撃力:☆☆ 巣に侵入してミツバチを食べます。食べる量は少ないが弱群には脅威となる。動きが速く取り除きずらい。 |
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大きなクモ 攻撃力:☆☆☆ 15cm位ある大型のクモです。夏に繁殖します。クモの巣を貼る範囲が1mと広いので、巣箱の近くにクモの巣があるとミツバチが沢山引っ掛かります。ミツバチの飛行ルートや巣箱の近くに居る場合は、棒でクモの巣を破壊しましょう。 |
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ヤモリ 攻撃力:☆☆ 巣箱の周囲で絶えずミツバチを狙っています。巣箱に侵入してくる事も多い。動きがとても速いので巣箱に侵入されると取り除くのが難しい。 |
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オキナワキノボリトカゲ 攻撃力:☆☆☆ 沖縄に生息するイグアナのようなトカゲで最大で30cmくらいになります。沖縄の方言では「アタックー」と言います。 巣箱の周囲で絶えずミツバチや色々な虫を狙っています。 警戒心がとても強く人間の気配を感じると逃げていきます。 昔は近くの山にも沢山いましがた、最近は数が減っています。 |
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西洋ミツバチ 攻撃力:☆☆ 他群の巣箱に進入しハチミツを盗みます。門番蜂が居ない超弱群に対しては、巣が空っぽになるまでハチミツを奪い群を崩壊させてしまう恐ろしい生物です。 一度狙われると狙われ続け、相手がミツバチだけに殺すこともできず、盗蜜時にミツバチヘギイタダニを他群に感染させてしまう事もあり厄介です。 |
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コガタスズメバチ 攻撃力:☆☆☆☆ 巣箱を見つけると単独でミツバチを捕獲しにきます。 仲間を呼ぶので放置していると、どんどんミツバチが拉致されていきます。 飛び回っているので専門の捕獲器が無いと駆除が難しい虫です。 コガタスズメバチ対策はコチラをご覧ください。 |
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オオスズメバチ(超天敵) 攻撃力:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 巣箱を見つけると単独~群れでミツバチを襲いにきます。他のスズメバチより体が一回り大きく攻撃力もずば抜けているので群に与えるダメージが深刻です。 オオスズメバチは半日も掛からずにミツバチ群を壊滅させる事があるので、日本では一番注意しなければならない天敵です。 オオスズメバチ対策はコチラをご覧ください。 |
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ミツバチヘギイタダニ(天敵) 攻撃力:☆ ミツバチの幼虫や成虫に寄生し体液を吸う養蜂業界で大問題になっているダニです。 薬物を使って定期的に駆除しないと群が徐々に弱り、最悪の場合崩壊します。 ミツバチの体に付着し群から群へ感染するので完全駆除が難しいです。 蜂の増えが悪かったり、群の調子が良くない時はこのダニが繁殖している可能性があります。また、発育不良の蜂(羽の縮れ等)が多い場合もこのダニが繁殖しているサインの一つです。 |
西洋ミツバチは、オオスズメバチ・ヘギイタダニへの耐性が無さ過ぎる為か日本では野生化していません(長期的に存続できない)。養蜂を継続的に続けるには、この2種類の天敵に気を付けなくてはなりません。
テープ コスト :☆ テープで巣門を狭める事によって、巣に侵入するタイプの外敵に効果を発揮する。安全性も高く使いやすい。 |
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虫取り網 コスト :☆ 空を飛ぶ天敵に対して威力を発揮する。安全性も高く用途が広い。 |
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ガスバーナー コスト :☆☆ 巣箱の中で逃げ惑う天敵を一撃で仕留める事ができる。ミツバチを焼かないように気をつけよう。他にも巣箱の殺菌にも使えて便利です。火は危ないので気を付けて使いましょう。 |
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アピスタン コスト:☆☆☆ ヘギイタダニ駆除剤です。ヘギイタダニだけを安全・効率的に殺せます。10群用(20シート)が7350円(消費税・送料込)で売っています。1シートで巣枠4~5枚に対応してます。 開封後の余ったシートは、容器に戻し密閉して冷暗所(冷蔵庫)で保存できます。 詳しい購入方法はコチラをご覧ください。 |
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アピバール コスト:☆☆☆ ヘギイタダニ駆除剤です。ヘギイタダニだけを安全・効率的に殺せます。10群用(20シート)が8400円(消費税・送料込)で売っています。1シートで巣枠4枚に対応してます。 アピスタンと違い加水分解するので、余ったシートは、完全密閉し冷凍庫で保存してください。一応・・・説明書には開封後は保存不可と記載されていますので、早めに使い切ってください。 アピバールは、巣やハチミツに残留しにくいのが特徴です(分解される為)。詳しくはアピバールのサイトを見てください。 詳しい購入方法はコチラをご覧ください。 |
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チモバール(チモール) コスト :☆☆☆☆☆ チモバール(主成分:チモール)は、最近承認されたヘギイタダニ駆除剤です。チモールの臭いがかなり強いのでダニ駆除中は養蜂場全体がチモール臭で包まれます。 チモールは、ハーブのタイムなどに含まれており殺菌剤・防虫剤として色々な所で使われています。 養蜂ではヘギイタダニ駆除に使われます。 結晶のチモールは扱いやすく、ミツバチへの害もギ酸と比べると穏やかです。ただし、コストが他のダニ駆除剤と比べ割高になります。 参考価格:チモール結晶 25gで2000円、500gで9000円 |
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ぎ酸 コスト :☆ ギ酸はヘギイタダニ駆除に使えますが、投与量を誤るとミツバチが大量死して群が崩壊します。強酸で刺激臭が強く扱いずらいのが欠点です。 ギ酸は人体に有害なので子供が触れる場所に置くのは絶対に止めましょう。 参考価格:ぎ酸(500ml 濃度85%)で1450円 *20kg単位で買うと激安です。 |
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シュウ酸 コスト :☆ シュウ酸を加熱するとシュウ酸とギ酸の混じった煙が発生します。この煙(シュウ酸やギ酸)を利用してダニを殺せます(*ダニの完全駆除はできない)。 シュウ酸はミツバチへの毒性が低く、影響が殆どないと文献に記載されてました。 参考価格:シュウ酸(粉末2kg)で4000円位です。 シュウ酸噴霧器はこちらのページで根津さんが販売しております。 シュウ酸のヘギイタダニに対する影響に関しては、下記の文献を参考にしています。 |
最後に、ギ酸・シュウ酸・チモールを使用したヘギイタダニ駆除を説明します。 これらは、手間が掛かる割にはダニ駆除率がアピスタンやアピバールより劣りますので、高いダニ駆除率を望む場合は専用のダニ駆除剤を使ってください。
昔、ヘギイタダニは東洋ミツバチに寄生し細々と生きていた。 その後、ダニ耐性の低い西洋ミツバチに寄生し世界的に大流行しました。 |
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ミツバチ成虫に張り付いているギイタダニの様子です。 写真の蜂の背にヘギイタダニが乗っているのが分かるでしょうか? ダニは成虫蜂に乗り移動します(体液も吸います)。 ヘギイタダニは、見つけた数の20倍は群に居ると思った方が良いでしょう。 |
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ミツバチの蛹に寄生しているヘギイタダニの様子です。ダニはミツバチの蛹に寄生し巣房内で増殖していきます。 ヘギイタダニの生態については、下記のページを参照して下さい。 |
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蛹の時にヘギイタダニに寄生されると、羽がちじれたミツバチに成る事があります(発達不良やダニからのウイルス感染による)。 このようなハチが巣箱の周囲を沢山ウロウロしてたら要注意です。ヘギイタダニが蔓延している可能性が高いので、早めにダニを駆除しましょう。 |
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ギ酸やチモールを使ったダニ駆除の概要です。ダニは死ぬがミツバチが耐えられる濃度のギ酸やチモールを巣箱内に置きます。 投与量が多すぎるとダニとミツバチの両方が大量死します。 シュウ酸(煙)は、ミツバチへの影響がかなりマイルドなので安全にダニだけを減らせるメリットがあります。 |
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ギ酸は写真のように綿に浸みこませて設置しています。 標準巣箱なら、一回の投与量は60~80%ギ酸を30~70ml(一週間に1回投与を2~3セット)。 ギ酸は刺激臭が強く皮膚に付くと痛く火傷の様になりました。このように、ギ酸は危ないので私は使用を推奨しません。 |
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2023年4月: この投与方法の利点は、余計な道具が不要な所です。 ギ酸が過剰投与になっている場合、巣箱の蓋を閉め瞬間に蜂が大騒ぎするので、直ぐに蓋を外してギ酸を少し蒸発させてから再度蓋をしましょう。 |
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シュウ酸の場合は、専用のシュウ酸を加熱する道具で煙を発生させ、巣箱内に煙を充満させます。 標準10枚巣箱なら、一回のシュウ酸投与量は2gです。1週間に1回投与を4セット行います。シュウ酸の場合、2g以上投与しても蜂が殆ど死なないので多めに投与しても大丈夫です。 シュウ酸の煙は、シュウ酸粉塵やギ酸を含んだ超刺激性の煙で喉や肺に良くありません。シュウ酸煙を扱う際は、必ずガスマスクを装備して下さい。 |
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チモールも同様に巣箱内に設置します。 チモールは、ギ酸に比べると人間やミツバチに与える害が少なく扱いやすいです。
標準巣箱なら、一回の投与量は2~3gが目安です(チモール結晶を一週間に1回投与を2~3セット)。 巣箱内部に投与後、チモール結晶は穏やかに昇華します。 |
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以前、面倒だったのでチモールを一度に12g投与(写真の量位)してみましたが、巣箱周囲はチモール臭で覆われ、働き蜂が巣箱から大量に出てきて大量死しました(ダニも沢山死んでました)。 チモールでも過剰投与すると、ギ酸同様にミツバチが大量死するので気を付けましょう。 |
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ギ酸投与中の群(9枚満群)の様子です。蜂が多い群では、写真の様に内部の蜂がギ酸を嫌って巣箱から出てきます。弱群や中群だと余り出てきません。 チモール投与でも似たような感じになります。 |
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ギ酸・チモール投与中に群に異常(働き蜂が超大量に巣箱から出てくるor大量死)が生じた場合は、過剰投与になっています。直ぐにギ酸やチモールを除去してください。 | |
ギ酸・チモールが効くとダニの死骸が巣箱の底に確認できます。ダニの死骸が確認できない場合は、投与量が少なすぎる又はダニが少ない群です。 |
ギ酸は安価でヘギイタダニを殺す効果が高いのですが・・・投与量が難しいです。 投与する際に、巣箱の容量・通気性・蜂数(巣箱内の換気・温度に影響)・外気温を考慮しないと、ギ酸蒸気濃度が薄過ぎて効果が全くない or 過剰投与で幼虫・蛹・働き蜂が大量死します。 私はこれまでにギ酸投与量ミスで4群くらい駄目にしてます。
ここでは、ギ酸投与量を「60~80%ギ酸を30~70ml」と記載していますが、上記の事を考慮した投与量にしてください。 また、適切なギ酸投与量を調べる具体的な方法ですが、少しづつギ酸の投与量を増やし、投与後に働き蜂が巣門から少し出てくる位がベストだと思います。
ギ酸を投与する時は、最低でもゴム手袋・保護メガネの着用を推奨します。臭気も害になるので、なるべく吸わないように風上で作業して下さい。