2024年10月20日:メゾネット+e-box構造を追加しました。オオスズメバチにお困りの方はお試し下さい。
ホバリングしながらヒット&アウェイでミツバチを1匹づつ狩る小型のスズメバチと違い、蜂類最強のオオスズメバチはミツバチ達に接近戦をしかけ特大ダメージを与えます。 その為、オオスズメバチが生息している地域で養蜂するなら、この凶悪な蜂への対策は必須です。
西洋ミツバチの門番蜂は、巣門に外敵が近づくと集団で襲い掛かり相手を倒そうとします。 しかし、この「巣箱を守る行動」がオオスズメバチ相手だと仇となり門番蜂大量死の原因になっています。 対照的に日本ミツバチは、オオスズメバチに対して過剰に反応せず、不用意に巣に入ってきたオオスズメバチを働き蜂が集団で囲い熱死させる特殊能力を有しています。
西洋ミツバチの場合、オオスズメバチに単独で戦いを挑んだ働き蜂は瞬殺されます。 また、集団で襲い掛かってもオオスズメバチに殆どダメージを与える事ができないので、一方的に虐殺される結果になります。
スズメバチが良く飛来する時期になると、門番蜂は写真のように巣門前に陣取り守備体制になります。
スズメバチが少ない季節にこの様な陣形を作る群はあまり居ません。 |
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この時期は門番蜂が敏感になっている事が多く、巣門に近づくだけで襲ってくる蜂もいます。 | |
スズメバチがミツバチを狙って巣門に近付くと、集団で一斉に襲いかかります。 | |
相手がオオスズメバチ以外なら、この一斉攻撃で追い返したり、時々殺したりする事ができますが・・・ | |
相手がオオスズメバチだった場合は、攻撃に向かった門番蜂は一方的に殺されてしまいます。
写真は、オオスズメバチに突撃し返り討ちにあった門番蜂の写真です。 |
西洋ミツバチは日本ミツバチと違いオオスズメバチに対抗できる手段を持っていないので、養蜂家が色々と対策を施さなくてはなりません。
オオスズメバチの生態は、冬は女王蜂以外死ぬ→女王蜂越冬→春に女王蜂単独で巣作り&子育てを始める→夏は増勢期→秋は群も大きくなり新女王蜂やオス蜂量産のために餌が沢山必要になる→ミツバチを集団で襲い食糧を得る→新女王蜂・オス蜂を量産→新女王蜂交尾→冬は女王蜂以外死ぬ→以下ループ。
通常、オオスズメバチは単独行動で狩りをしていますが、餌が大量に必要になる秋頃には集団でミツバチ群を襲い出しミツバチ成虫を虐殺後に巣内の幼虫を食糧にします。
養蜂家が行っているオオスズメバチ対策は色々ありますが、ここでは代表的な方法を紹介していきます。
スズメバチが好む誘引液(酒・酢・ブドウジュース・砂糖等)をペットボトルに入れた物が有名ですが、市販のスズメバチ誘引液でも十分に効果があります。 誘引系のトラップは、コストパフォーマンスに優れておりオオスズメバチを継続して捕まえ続ける事ができます。
春に誘引液トラップを使えば、群を作っている最中の女王蜂を沢山捕獲できます。
こんな大きな誘引式スズメバチトラップも作りました。 効果は抜群でしたが・・・大きすぎて邪魔になるので作らないほうが良いでしょう。
誘引系のトラップは、巣門を直接守る事が出来ないのが欠点です。 ペットボトルトラップの作り方は、こちらの動画を参照して下さい。
巣箱にねずみ捕り粘着シート(耐水仕様) を設置し、オオスズメバチを引っ付けます。 1匹掛かるとそれに誘われるように次々掛かります。 粘着シートトラップはこちらの動画を参照して下さい。
粘着シートも誘引系トラップと同様に、巣門を直接守れないのが欠点です。 また、外勤蜂が歩く処には設置しないようにして下さい(巣箱の上部・側面・巣門から少し離れた場所に設置する)。
巣門に取り付ける捕獲器は、巣門をガードできる点が優れています。 オオスズメバチ捕獲器は、オオスズメバチの習性(光に反応し上に歩く)を上手く利用しオオスズメバチを捕獲籠内に誘導します。 構造は簡単なので、大量に必要なら自作しても良いでしょう。
オオスズメバチ用捕獲器は、ホバリングしながら狩りをするスズメバチの捕獲には不向きなので注意して下さい。 下記の写真は、ホバリングしながら狩りをする対コガタスズメバチ用に開発した巣門に取り付けるタイプの捕獲器です。 スズメバチを捕獲する仕組みが全く違うので、オオスズメバチには効果がありません。
巣箱を網で覆ったり、巣門にオオスズメバチが通れない隙間の板や網等を設置する事があります。 しかし、襲ってくるオオスズメバチを駆除しなければ根本的な解決にはなりません。 また、西洋ミツバチの場合は、巣門付近をオオスズメバチがウロウロしてると、門番蜂が突撃して殺されまくります。
上記の写真は、巣門前でミツバチが出てくるのを待っているオオスズメバチの様子です。 この様に頭が良く嫌らしい天敵です。
一時期、対オオスズメバチ用の電気柵開発に熱を入れていましたが良い結果が得られず挫折しました。 一緒に開発をしていた他の養蜂家の方(Mさん)も、電気柵では無理だという結論に達しています。
一応、電気柵でもスズメバチは殺せましたが・・・他のトラップと比べ繊細過ぎる&コストフォーマンスが激悪です。 下記の写真はコガタスズメバチ用の電気柵トラップ(試作)です。
ここまで色々なオオスズメバチ対策道具を紹介しましたが、これらの道具を組み合わせてもオオスズメバチが多い地域では、西洋ミツバチに多大な被害が出ます。
虫取り網やラケットを持った人間が養蜂場を常時徘徊するのが一番効果のあるオオスズメバチ対策です。 蜂類最強のオオスズメバチといえども対蜂用の武器を持った人間には敵いません。
現在、オオスズメバチが特に多い地域で養蜂をしているM氏・K氏と共に、新しいオオスズメバチ対策(空洞式)を考案し実施試験を行っています。
空洞式の原理
通常、巣門にオオスズメバチが近づくと働き蜂は臨戦態勢に入ります。 |
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そしてオオスズメバチが30cm位近づいたら、門番蜂が次々に襲い掛かります。
この時に、オオスズメバチに門番蜂が大量に殺されてしまいます。 この現象は、巣門にオオスズメバチ捕獲器を付けていても起こり、敵に突撃した門番蜂が無駄死にします。 |
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空洞式では、門番蜂がオオスズメバチへ突撃しないように、巣門を最奥の上部に変更しました(第1巣門)。
第2巣門はオオスズメバチが侵入できない隙間幅なのでオオスズメバチはこれ以上第1巣門に近寄れません。 このように、門番蜂とオオスズメバチとの距離が十分に離れていれば突撃行動は起きません。 第2巣門を通過する働き蜂も、オオスズメバチに攻撃を仕掛けないので無駄死にも大幅に減ります。 |
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オオスズメバチは第二巣門(幅7mm以下)を通過出来ませんが、第二巣門前に屯する事があるので、第二巣門には通常のオオスズメバチ捕獲器を取り付けます。 | |
空洞式で必要な特殊道具は、第1巣門用の板になります(試作品)。
これを巣箱(空洞部分)と、継箱の間に設置します。 巣門の位置変化のミツバチへの影響を1年見ていますが、特に影響なく元気に育っています(継続中)。 |
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自作した「空洞式+電気柵」の巣箱です。 沖縄にはオオスズメバチが居ないので有効性の確認は出来ませんでした。 | |
Kさんが実験している空洞式巣箱です。 オオスズメバチの被害が減ったようだとの感想を得ています。 | |
Kさんが実験した写真です。 オオスズメバチが巣門前(第二巣門)にいますが、ミツバチ達は突撃していません。 | |
Mさんが試行錯誤している空洞式巣箱です。Mさんは特にオオスズメバチが多い地域で養蜂しており、オオスズメバチ対策に気合が入っています。
オオスズメバチが多い地域では、生半可なオオスズメバチ対策は無意味です。 |
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Kさんが作ったとても綺麗な空洞式巣箱です。 |
1年目は基礎実験で費やしましたので、2年目はMさん・Kさん共に実証実験に入る予定です。なんとか良い結果が出る事を願います。
3年目は他の人も空洞式実験に参加し、空洞式によりオオスズメバチの被害が大きく減る事を確認できました。空洞式+スズメバチ捕獲器や粘着板の併用が良いようです。
空洞式実験のスレットです。 空洞箱検証、実験⓸ 空洞箱検証、実験⓹
空洞箱実験の発展形として「メゾネット構造」をK氏が考案し実験をつづけた結果、オオスズメバチ対策に大きな効果がある事が分かりました。オオスズメバチにお困りの方にお勧めの養蜂スタイルです。
メゾネット構造の原理
メゾネット構造は、空洞部分を2重にした構造になっています。黄緑の空洞部分に第1巣門と第2巣門があります。K氏は、「第1巣門は1cm×14cm」、「第2巣門は1cm×板幅」にしています。 この空間(黄緑部分+灰色部分)が緩衝地帯になり、暑い日にミツバチが一番下の空洞部分に屯するのを防ぎます。 加えてこの部分が越冬や越夏に効果的との事です。 また、正面に金網を取り付けてあるので、クロメンガタスズメ等の巣箱に侵入する生物を出入口部分でブロックできるのも良いとの事です。 |
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メゾネット構造のコンパクト化
K氏はメゾネット構造を改良しコンパクトにしました。 K氏 「小さくしたメゾネット構造でも分封(未遂含む)や交尾飛行は問題無く行われています。金網は1年中取り付けたままにしていますが、蜜や花粉をしっかり貯めています。」 |
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メゾネット構造で飼育
写真はメゾネット構造+3段群です。オオスズメバチが来ない季節は下記で紹介する延長箱(e-box)は取り外します。 K氏:「最盛期は継箱3段で管理していますが、管理者の身長により湿気対策のブロックは水平置きにした方が良いです。私は158cmなのでギリギリ管理できる高さです。 試しに継箱4段にもしたことがありますが、これは高身長の方以外は危険なのでやめた方が良いです。こちらは蜂場にカエルがたくさんいるので、ブロックは垂直置きにしています。」との事です。 |
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メゾネット+e-box構造
メゾネット構造に延長箱(e-box)を取り付けると、オオスズメバチ被害を大幅に防げるようになります。 K氏の実験の結果、延長箱と空洞部分を合わせた長さは70cm以上(空洞部分は第2巣門の位置)が良い結果を残しています。e-boxが短すぎると出入口に来たオオスズメバチにミツバチが反応して大虐殺が起きる可能性があります。 金網はメゾネットから外してe-boxに取り付けてください。金網は画鋲で留めてあるだけなので移設が簡単です。 |
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e-boxの構造(実物写真 K氏提供) 塗料はターナーのミルクペイントを使っています。 メゾネットへのe-boxの取付は写真のように針金を使用しています。 |
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粘着シートの位置
メゾネット+e-box構造ではオオスズメバチを駆除できないため、粘着シートは必須になります。 K氏 「粘着シートは巣箱から少し離れた場所や屋根上の設置が望ましく、e-box上には設置しない方が良いです。もし設置する場合は金網から10cm程距離をとるか、金網から6cm以上離し衝立を取り付けます。また、内検時には必ず粘着シートを外します。そのままにしておくとミツバチが全面にくっ付いてしまいます。」との事です。 |
K氏 「他に効果があったオオスズメバチ対策として、蜂場をネットで囲うという方法があります。支柱やネットを購入するとかなりの金額になりますが、金銭的に余裕のある方はこちらもお勧めします。オオスズメバチ酒やオオスズメバチの蜂蜜漬けを作る場合はこちらの方が捕まえやすいです。毎日数回の見回りが出来ない場合は粘着シートが必要になります。ネットが喰い破られることがあるので時々チェックすると良いです。」
空洞式実験のスレットです。 ⑦空洞箱実験 エピローグ