2024年7月:ここで紹介しているアリは、ルリアリではなくアシジロヒラフシアリというアリでした。このアリは、アリ駆除剤に対して耐性があるそうです。

ルリアリは沖縄~九州に生息しています。このアリは数年前までは普通のアリレベルの被害でしたが、2021年頃から大量発生して一部の養蜂家に多大な損失を与えています。

私の1つの養蜂場でもルリアリが大量発生しており、このアリと2年近く戦い続けていました。試行錯誤の末、効果的な対策を発見しましたのでここに記載いたします。 少しでもルリアリ被害が減る事を願っています。

ルリアリの性質

ルリアリは、黒くて艶のあるアリです。大群で長い列を作り餌場まで移動します。このアリは物の隙間等に巣を作ります。

ミツバチの巣箱は良い餌場なので、偵察アリが常に徘徊し餌(ミツバチの死骸や砂糖水)を探しています。

砂糖水が大好きなアリなので、アリ対策無しにミツバチに給餌した場合、巣箱が直ぐにアリだらけになる可能性があります。

ルリアリが生息する養蜂場の場合は、ミツバチが1時間ほどで飲み尽くす位の給餌量にしたほうが無難です。

次は、ルリアリを毒餌で間引いたり、可能な限り巣箱に近づかせない方法を記載します。

ルリアリの間引き方法
ルリアリを間引きする方法:

アリは、自作のアリ駆除剤(ホウ酸砂糖水)で簡単に間引く事ができます。作るのが面倒な時は、市販のアリ駆除剤でも問題無いです。

自作アリ駆除剤の作り方です。
①薬局でホウ酸、又はホウ砂を買う
②砂糖水100mlに対して小さじ一杯(2~3g)のホウ酸を入れる(アバウトでOK)
③よく攪拌して完成です

砂糖水は糖濃度50%位の物を使ってください。卵の黄身を入れるとアリの食いが良くなります。ホウ酸が完全に溶けなくても問題ありません。ホウ酸の水への溶解度は100mlあたり2gほどです。

作ったアリ駆除剤は、アリが多い所に置いてください。 ホウ酸砂糖水をミツバチが誤って飲むと、ミツバチにも悪い影響が出るのでミツバチが飲めないように設置して下さい。

市販のアリ駆除剤の容器を再利用すると、アリにだけホウ酸砂糖水を飲ます事ができ安全です。

ホウ酸砂糖水を飲んだアリは、ホウ酸中毒で数時間後に死にます。定期的にアリを駆除する事により、一時的にアリの強群化を防ぐことができます。

自作アリ駆除剤は、常温保存するとカビが生えたりするので、使わない期間は冷蔵庫で保管して下さい(誤飲に注意!)。

ホウ酸砂糖水で大量に死んだルリアリの写真(黒い部分は全部アリの死骸です)

ルリアリは砂糖水が大好きなので、ホウ酸砂糖水を設置すると飲んで中毒死します。ただ、仲間が大量死すると毒入り砂糖水を一時的に飲まなくなるので毒殺による完全駆除は無理でした。

「ルリアリなんか毒殺すれば問題解決」と思っていましたが、毒殺により一時的に養蜂場からアリは減りますが数週間で復活してミツバチを襲いだします。 厄介な事に、毒殺により養蜂場付近に住んでいるルリアリが減ると、遠くに住んでいる他群のルリアリが餌を求めて遠征してくるので養蜂場のアリが減ったからといって油断できません。 市販されているほぼ全てのアリ駆除剤を大量に使いましたが、ルリアリを一時的に減らせるだけで完全駆除はできませんでした。

ルリアリが大量発生している養蜂場では、ルリアリ以外のアリを見かけません。たぶん、ルリアリに駆逐されているのだと思います。 何種類かのアリが程よく生息している養蜂場では、ルリアリの大量発生は起こっていません。

ルリアリを巣箱に近づかせない方法
ルリアリを巣箱に近づかせない方法:

毒殺ではキリが無いので、ルリアリが巣箱に近づけない方法を考えました。

左の写真のように木材などでアリの移動を制限して、アリの移動ルートに各種グリスを塗る方法も試しました。

グリスを塗る方法は、アリの侵入防止に効果ありましたが、どのグリスを使用しても大雨が降るとグリスが剥げるので塗り直しがとても面倒でした。

グリスの代わりに虫用の粘着板をカットして使ってみました。これが効果絶大でアリが全く巣箱に近づけなくなりました。

虫用の粘着板はアマゾンで50枚1500円位で売っています。虫用粘着板は耐環境性で、粘着面が汚れない限り使い続けられます。粘着面を下向きに設置すれば汚れにくいです。粘着板の交換も簡単です。

巣箱の下にある「木の棒」は可能限り水平にして下さい。巣箱を乗せた時にグラつくようだと、強風で巣箱が棒から落ちる事があります。

虫用粘着版を使ったアリ侵入防止の原理

巣箱と足場の間に粘着版を設置する事で、粘着版を経由しないとアリが巣箱に行けないようにします。

アリは粘着面を通過できないので、巣箱に到達できないという簡単な原理です。

粘着面にくっ付いたルリアリです。仲間のアリが粘着面にくっ付いていると、他のアリは警戒して粘着面に寄ってこなくなるのでより効果があります。

粘着板は、強風や大雨で粘着面が汚れる事があります。粘着面が汚れたら交換時期です。

太陽光でも粘着シートが劣化したので4カ月に一回は交換した方が良いです。

粘着版を利用することでルリアリ対策は一段落しました。 このアリ対策の唯一の欠点は、「粘着板が汚れたら交換」しないといけない事です。 粘着板の交換は少し面倒ですが、このアリに関しては絶対に妥協をしてはいけません。一回の対策ミスで次の日にはミツバチが全滅する可能性があります。

ルリアリ対策を妥協した結果

この群は調子のよい8枚群だったので、養蜂場で唯一ルリアリ対策をしていませんでした。 その結果、この群はルリアリの超大群に襲われて1日で全滅しました。

巣箱に付いてる黒い点は全てルリアリです。写真では分かりずらいですが、巣箱全体がルリアリで覆われていました。

養蜂場のルリアリは定期的に毒殺していましたが・・・この結果です。

昨日まで養蜂場にルリアリは少なかったのですが、遠くから餌を求めて大量にルリアリが遠征してきたようです。

蜂が沢山死ぬと、それがエサになり更に大量のルリアリが養蜂場全体に押し寄せてくるので悪循環です。

「蜂が多いからアリが来ても対抗できるだろう」と妥協した自分に怒りを感じました。

粘着版でガードしている群は無事でしたが、粘着版の下に大量のアリが居る状態は恐怖でした。

温暖化の影響でこのアリが日本全体に広がれば、現状のような効率の良い養蜂は出来なくなるのではと危惧しております。

2024年6月:2024年は毒餌を「卵の黄身+砂糖水+ネオニコチノイド系の毒」に改良しました。ルリアリの嗜好性実験をした結果、こいつらは卵の黄身が好きという事がわかりました。 この改良毒餌を1週間に1回ほど養蜂場のルリアリの列に散布し、徹底定期にルリアリの数を減らすようにしました。その結果、ルリアリが少し減って他のアリが復活してきました。このまま他のアリが増え続ければ、ルリアリの陣地拡大を減らせるかもしれません。

しかしながら、強力な毒餌を毎週与え続けても全く全滅の兆しが見えないルリアリはヤバすぎです。

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