西洋ミツバチは暑過ぎたり寒過ぎたりすると、女王蜂の産卵が減り越夏や越冬状態に入ります。どちらの状態も群が大きく貯蜜・貯花粉が豊富なら、越夏・越冬が安定します。
気温が30度を超えてきたら、「巣箱の換気を良くする」・「遮光板を巣箱に設置する」・「巣箱の近くに水を置く」などの越夏対策(暑さ対策)を行ないましょう。
暑さで群に大きな負担が掛かると、女王蜂の産卵が完全に止まり働き蜂が減っていきます。あまりにも暑いと、巣箱内部の幼虫や蛹が熱さで全滅するので危険です。また、群の逃避(巣箱を捨てて他に行く)が起こる確率も増えます。
気温が30度を越えると蜜源植物も激減します。そのため、群の貯蜜が減ってきたら給餌を行ないましょう。
春が終わり気温が上がってくると、巣箱の外で待機する働き蜂が増えてきます。 | |
特に換気が悪い巣箱では、ミツバチが大きな塊になるほど外に出てきます。
このようにミツバチが大量に外で屯するようになったら、巣箱内部がかなりの熱さになっていると考え、必ず暑さ対策をしましょう。 |
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例外的に、強群になると暑くないのにミツバチが巣箱から沢山出ます。 暑いとさらに大量のミツバチが巣門前で屯するようになるので、養蜂初心者はビックリするかもしれません。 ミツバチが暑いと感じている目安は、巣箱内部の働き蜂の数です。あまりにも巣箱内部に働き蜂が少ない場合は熱さが原因です。 |
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暑さ対策① 巣箱の換気を良くする 巣箱の換気を大幅に良くする方法は、巣箱のフタをズラして隙間を作る事です。 標準巣箱でもフタを完全に被せずに斜めに設置すれば、簡単に隙間を作る事ができます。 ミツバチがフタの隙間から出入し巣門が変わってしまう事がありますが、暑さで群が弱るよりは換気性をあげた方が良いです。 隙間から多少雨が巣箱内部に入っても、ミツバチに大きな影響はありません。 気になるなら遮光版を巣箱の上に置いて雨が直接隙間に入らないようにして下さい。 |
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補足:巣箱の隙間とプロポリスについて 左の写真はフタの隙間に塗布されたプロポリスです。ミツバチはプロポリスを使い換気口の大きさを調整する事が出来ます。 |
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暑さ対策② 遮光板を巣箱の上に設置する 巣箱の上部に遮光板を設置することで、巣箱に太陽光が直接当る面積を減らせます。それにより、太陽光による巣箱の温度上昇を抑えられます。 遮光板は、プラスチック板やベニア板で十分効果がありますが、あまり薄い板だと長持ちしません。1年以上使う予定なら厚さ10mm以上の板を使用しましょう。 |
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暑さ対策(2022年6月) 麻袋を巣箱に上に設置する 最近は、暑さ対策として巣箱の上に麻袋を2枚置いてます。 麻袋は、安価且つ燻煙器用の燃やす資材としても使えるので汎用性が高いです。 |
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暑さ対策③ 大きな日除けを設置する 大きな日除けを設置することで、巣箱と巣箱周囲に直射日光が当たる事を防げます。内部検査する人間も涼しく、真夏の作業が楽になります。 効果抜群ですが、設置費用が少々掛かるのが欠点です(土台とパラソルのセットで3800円位)。パラソルは直径2m位の大きさ+柱が長いものなら作業の邪魔にならず良いです。 |
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土台とパラソルの固定 パラソルは風を受けると浮き上がり土台から外れる事があるので、パラソルと土台はガムテープなどで接着しましょう。 私が使用している土台はコンクリート製24kgの物です。水を入れるタイプの土台(12kg~)もありますが、重さが足りず風が吹くとパラソルが倒れてしまいました。 |
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風が強い場所でのパラソル固定 重い土台を使っても風が強い場所ではパラソルが倒れる事があります。そのような場所では、土台に加え鉄棒等でパラソルを固定します。 写真では、ビニールハウス用の鉄骨資材を使いパラソルを固定しています。 注意: あまりに風が強い所ではパラソル自体が壊れてしまします。 |
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暑さ対策④ 巣箱の近くに水を置く ミツバチは、暑い時ほど巣箱冷却の為に水を沢山必要とします。 巣箱の近くに水源(川や池)が無い場合は、巣箱の近くに水を置いてあげると良いでしょう。 表面がツルツルしている容器に水を入れて与える場合は必ず足場を作って下さい(写真では木が足場になっています)。 そうしないとミツバチが大量に溺死する事があります。 |
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水を入れる容器の表面がザラザラしているなら、足場は必要ありません。ミツバチは左の写真の様に壁を歩き水を飲めます。 |
夏の暑さが厳しい地域では、上記の越夏対策を施してもミツバチが弱るのを避けられません。そのため、晩春から夏に向けて準備が必要になります。具体的には、弱群での夏入りを避けるため、晩春から大量給餌を行い夏までに中群以上にします。 中群以上(ミツバチ8000匹以上)なら夏に全滅する確率は低いです。
夏に群が弱り消滅しそうなら、他群に合同して残っているミツバチを無駄死にさせないようにしましょう。
放射温度計を使うと、巣箱や内部の大まかな温度が解り便利です。内部温度が39度を超えると幼虫や蛹が危ないので、巣箱の換気・日除け・水などを強化してください。
日除けの効果は、「巣箱遮光の効果」を参照してください。*遮光する素材によっても効果が変わると予想できます。金属などは熱くなるので日除け板には適しません。 暑さとミツバチの関係については、「暑さと巣門付近に居る蜂の変化」という記事も参考になると思います。
ミツバチにとって冬は夏より厳しい環境です。 それ故、計画的な越冬の準備が必要になります。 冬でも最低気温が11度以上の地域なら、ミツバチは越冬せず活動を続けます。(一部の九州地域~沖縄県等)
ミツバチは越冬状態になると、巣箱内で大きな塊(蜂球)になり貯蜜・貯花粉を消費しながら冬が過ぎるのを待ちます。
貯蜜 冬を越すには沢山の貯蜜が必要です。極寒の地(冬の最低気温が-15℃以下になる所)では、一群当り30キロものハチミツが必要になります。 ミツバチを飼育している地域により、越冬に必要な貯蜜量は大きく変わりますが、例として九州~関東地域なら10~15kg前後のハチミツ(貯蜜枠4~5枚)が必要とされています。 |
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貯蜜が足りない時① 越冬するには貯蜜が足りないと判断した時は、砂糖板を作り巣枠の上に置きミツバチに与えます。 砂糖板の作り方はこちらのページの下の方を参考して下さい。 もし、寒くなるまで数週間の時間があるなら、濃い砂糖水を大量に与え貯蜜させてください。 |
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貯蜜が足りない時② 越冬するには貯蜜が足りないと判断した時は、海外産激安ハチミツ等を、直接空の巣房に入れ与える事もできます(人工貯蜜枠)。 作り方は、空巣脾枠の上にハチミツを沢山垂らし、それを手で広げながら優しく空巣房に押し込みます。 この方法なら数分で1~2kgの貯蜜枠を作れます。 |
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貯花粉 越冬には、タンパク源である花粉の貯蓄も必要です。 特に、本格的な子育てが始まる晩冬から多くの花粉が必要になります。 |
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貯花粉が足りない時 越冬するには貯花粉が足りないと判断した時は、空の巣房内に直接天然花粉を大量に投入してあげましょう(天然花粉は通販や養蜂園から購入可)。 巣房に花粉を6割程入れたら、上からハチミツをかけます(写真参照)。 多少、与えた花粉が巣房から落ちてしましますが、人工的に貯花粉量を増やせます。 |
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越冬群 群の規模が大きければ大きいほど越冬が安定します。特に寒さの厳しい地域では、2段群(ミツバチ3~4万匹)は越冬に必要です。 ミツバチは越冬中、巣箱内部で蜂球化しながら動き、巣枠に貯められた蜂蜜や花粉を補給します。 蜂球中のミツバチは、羽の筋肉を振わせて蜂球内部を33度程に維持しています。 |
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巣箱の防寒対策① 越冬時は、巣箱の気密性が重要です。 巣箱内部に寒い風が簡単に入るようだと、越冬中のミツバチに大きな負担になります。(巣箱を完全密閉するとミツバチが窒息死するので注意して下さい。) 巣門は画像の様に小さくし、他の余計な隙間はテープ等で塞ぎます。 |
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巣箱の防寒対策② 寒い地域だと、巣箱を保温材で覆ったり、巣箱内部の余計な空間に麻布などを詰めて保温力を高めます。 巣箱の内外に保温材を使用する事で、巣箱内部の熱が外に逃げにくくなり巣箱内部にいるミツバチの保温負担が軽減します。 黒色の保温材を使用すると、太陽光をよく吸収し保温材が暖かくなります。 |
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ダニの寄生率(重要) ヘギイタダニに寄生され体液を吸われたミツバチ(成虫)は寿命が短くなります。また、このダニに蛹の時に体液を吸われると、羽が縮れた不良の蜂が生まれてきます。 そのため、越冬群のダニ寄生率が高いと、越冬中に働き蜂が力尽き、越冬に失敗する確率が高くなります。 |
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越冬中の管理 越冬中は、巣門前にミツバチの死骸があれば取り除いたり、雪で巣門が閉ざされてないか時々チェックしてください。 どうしても群を内部検査する必要がある場合は、晴天で風が無い暖かい日に行って下さい。 冬の内部検査は、群の越冬を邪魔しないように素早く終わらせて下さい。(蜂球部分は触らないようにします。) 貯蜜が減っていたら、水分の少ない緩行性の餌(砂糖板)を蜂球の近くに置きます。 育児が本格的に始まる晩冬や春先に群が餓死しやすいので、貯蜜・貯花粉の量には注意して下さい。貯蜜が少ないなら砂糖板、貯花粉が少ないならパテ状の代用花粉を与えます。 注意:越冬中の群に砂糖水を与えてはいけません。 働き蜂がノゼマ病(働き蜂の寿命が減る)に掛かる確率が大幅にあがり、越冬失敗する可能性が高まります。 参考文献: FAT BEES SKINNY BEES |
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越冬群の動き 冬の天気が良く暖かい日には、ミツバチが糞をするために外に出て飛び回ります。 |
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保温装置や室内越冬について 保温器を巣箱の底に置いて、巣箱内部を保温する事もできますが、電気代+保温装置が必要になるのであまりお勧めできません。 参考になるか解りませんが・・・私が作った保温装置はこちらで紹介しています。 |
越冬の準備は、夏の終わり頃から本格的に始める事になります。大量給餌で、秋の終わり頃までに強群化、越冬に必要な蜂蜜・花粉を蓄えさせます。強群化が遅れ越冬できそうにない群は、早めに他群へ合同します。ヘギイタダニ寄生率を下げる為、ダニ駆除も同時に行ないます。
大量の貯蜜と貯花粉を持ったダニ寄生率の低い強群で冬に挑めば、越冬に失敗する確率が下がります。
補足: ミツバチを飼育している地域により越冬条件(越冬群の規模・貯蜜量・保温材の使用等)が異なるので、越冬に関しては、土地鑑のある地元の養蜂家に尋ねるのが一番確実です。 養蜂道具を何個か買えば快く教えてくれるはずです。(何も買わずに質問だけをするお客を毛嫌いする養蜂家も居ます。)
厳しい冬を避けるため、冬でも暖かい都道府県(一部の九州地域や沖縄県)にミツバチ群を一時避難させる養蜂家も居ます。