女王蜂(西洋蜜蜂)の輸送は、群の輸送と比べると格段に簡単です。 群の輸送と違い夏もで何とか輸送できますが、車の中に入れっぱなしにすると高温で女王蜂が死ぬ事があるので気を付けてください。
王籠内のミツバチ(女王蜂も含む)は、群と違い自力で温度調整が全く出来ないので、夏や冬の郵送には注意が必要です(夏は暑すぎて死に、冬は寒すぎて凍死します)。 その為、女王蜂の郵送は気温が15~28度の春や秋に行うのが基本です。 例外的な輸送方法として、働き蜂を100匹ほどお供につければ女王蜂をチルドで輸送できます。
補足: 西洋ミツバチの高温致死温度は46度前後で、低温致死温度は10度前後です。ミツバチは、15度以下に体温が下がると低温麻痺で動けなくなります。 ただし、働き蜂が沢山いると蜂球化し耐寒性が劇的に向上するので氷点下でも生存できます(保温のエネルギー源は必要)。
輸送用の餌の作り方
輸送用の餌は、蜂蜜と砂糖を混ぜ粘土状にしたものです。 まずは、ハチミツ+上白糖(グラニュー糖でも可)を使用した餌の作り方です。 |
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上白糖にハチミツを少しだけ加え混ぜます。ハチミツを加え過ぎるとドロドロになるので、少しづつ加えて量を調整して下さい。 | |
団子にしても形が崩れない位の硬さにします。 | |
作った餌は、王籠の餌を入れる場所に詰めて使用します。
餌を設置する場所が無い王籠の場合は、王籠の隅にでも押し込んで下さい。 |
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輸送用の餌は、大量に使う物では無いので作り過ぎに注意して下さい。
余った餌は容器で保存が効きます。(遮光して保存して下さい。) |
粉砂糖(シュガーパウダー)を使った輸送用餌の作り方も説明します。 上記で紹介した上白糖(グラニュー糖でも可)を使用した餌と給餌性能に差はありませんが、こちらのほうが扱いやすいです。(王籠にくっ付き易い)
シュガーパウダーとは、グラニュー糖より更に細かいパウダー状の砂糖です。粒が細かいだけで化学的な成分はグラニュー糖と全く一緒です。
上白糖やグラニュー糖と比べ高価なのが難点です。 |
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シュガーパウダーは、コンスターチが使われてない製品の使用を推奨します。
沖縄では、コンスターチ無しのシュガーパウダーはKALDI COFEE FARM(サンエー内の店舗)や、ダイソーの食品コーナー等に売られています。 どうしても身近で手に入らない場合は通信販売を利用して下さい。コンスターチレスの粉砂糖 |
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作り方は同じです。 シュガーパウダーにハチミツを少しづつ加えてかき混ぜて下さい。 | |
このように少し粉っぽい状態にして下さい。上白糖で作る時と同様にハチミツの加え過ぎに注意してください。 | |
手でこねて固いキャラメル状になれば完成です。この餌は、上白糖から作る輸送用餌より、粘度があり王籠に設置しやすいのが特徴です。 |
餌が柔らかすぎる(ハチミツが多すぎる)と、王籠内に設置した餌が時間経過で垂れてくるので注意して下さい。
王籠内の餌の有無でミツバチがどうなるか実験しました。
左の王籠は餌有りです。右の王籠は餌無しです。両方とも働き蜂が4匹づつ入っています。 |
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実験前のミツバチです。ウロウロと王籠内を徘徊しています。 | |
王籠に閉じ込めて1日が経過しました。餌ありの方は4匹とも元気に生きています。 | |
一方、餌無しの方は4匹全部が死んでいました。このように王籠内に餌が無いと、ミツバチは一日も持たずに全滅する事があります。 |
上記の結果から、王籠内の餌はとても大切という事が理解できたと思います。
①女王蜂とお供蜂を隔王籠に入れる 餌を設置した隔王籠に、女王蜂1匹と働き蜂を3匹ほど入れます。 ミツバチの王籠への詰め方はこちらを参照して下さい。 女王蜂出荷の動画もありますのでご参考までに。 |
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②小さな箱に入れて底部に固定する 隔王籠を段ボール箱に入れます。隔王籠はセロテープで箱の底に固定します。 女王蜂を郵送する場合は、郵便局で売っている60サイズのダンボール箱に入れると良いでしょう。 |
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③段ボール箱の換気口について ダンボール箱の側面をカッターで切り抜き換気口を作ります。ミツバチの酸素消費量は少ないので、大きな換気口は不要です。 |
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ゆうパックで輸送する場合、段ボールには必ず網をしましょう。箱に網が掛かってないと空輸が出来ず、陸路や船便になってしまいます。
ゆうパック60サイズなら、網は農作物用5kgの物が使えます(写真参照)。 |
王籠内の働き蜂が長時間激しく騒いでいる時は注意が必要です。そのまま騒ぎ続けると半日も持たずに死んでしまう事があります(過労死?)。 働き蜂が騒ぐ原因は、光・暑さ・外部刺激だと思いますので、輸送中は王籠を遮光し涼しい状態にしましょう。
気温が高くなると、女王蜂が輸送中に死ぬリスクも高まるので輸送箱に工夫が必要です。
画像の箱は、俵養蜂場様からカーニオラン女王蜂を夏に沖縄まで送ってもらった時の箱です。 |
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内部の様子です。王籠の下部には大型の保冷剤が入っていました。 | |
女王蜂発送から1日で届くなら、保冷剤を入れておけば死着の可能性を減らせるようです。 ただ、沖縄県や一部の地域(発送から到着まで2日掛かる場所)では、保冷剤が持たず女王蜂が死着する可能性が高いと思います。 |
注意: 郵便局は生物の死着を補償しません。 夏は輸送~配達中に高温で死ぬ可能性があり、冬は凍死の恐れがあります。女王蜂を郵送する際は気温に十分注意して下さい。
超注意: 船便ルートになる場所(離島など)に女王蜂を郵送する場合は更に注意が必要です。 郵送した女王蜂が高い頻度で死んでいます。
追加情報(2017年7月): 女王蜂をチルド便で輸送すると、暑い時期でも安全に出荷ができます。 暑い時期はチルドの利用も選択肢の一つにして下さい。 チルド輸送実験① チルド輸送実験②
追加情報(2023年5月): ゆうパックでのミツバチのチルド輸送は出来なくなりました。
働き蜂は王籠に監禁している日数が長いと、寿命+ストレス?で徐々に死んでいきます。あくまで経験則ですが7日位は大丈夫です。10日位になると死ぬ個体が増えてきます。
女王蜂なら2~3週間は大丈夫ですが、王籠に何週間も閉じ込めていると産卵能力が低下する可能性があるので注意して下さい。
王籠内のミツバチの生存率には、餌・個体差・気温・湿度・ストレス等・・・色々な要素が関係していると思います。 そのような理由で、ここに書かれている王籠内のミツバチ生存日数はあくまで目安程度です。 私が確実に言える事は、働き蜂・女王蜂ともに王籠に閉じ込めている日数が短い方が外に出した時に調子が良いです。