群の分割方法はとてもシンプルです。 しかし、群を分割する事自体は簡単なのですが・・・分割群を置く場所が問題になります。 外で仕事をしているミツバチは、巣箱の位置を正確に記憶しています。 この記憶が非常に厄介で、分割群を元群の近く(1~2km以内)に置くと分割群のミツバチ(3~7割)が元群に戻ってしまいます。 このような理由から、群分割をする際はミツバチの記憶を考慮しなければなりません。
分割群を遠くに持っていく場合は、特に問題は起きません。
分割群を元群の近くに置く場合は、少々工夫が必要なります。 ただ、どの程度のミツバチが元群に戻るかは解らないので、何もしなくても群分割が上手く行く事もあります。
まず一つ目の方法です。 群を分割後にミツバチを巣箱の中に2~3日閉じ込めます。
ミツバチを巣箱に閉じ込めている間に、蛹から若いミツバチが羽化します。若いミツバチは外部記憶が無いので、分割群解放後も分割群に残ります。
上記の方法を写真付きで解説します。
巣箱を用意する 分割した群を入れるので、巣箱を用意してください。 ここでは小さい巣箱を使いましたが、巣箱なら何でも大丈夫です。 気温が20度以上なら、換気性能が良い巣箱を使用して下さい。 |
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巣箱の出入り口を塞ぐ 巣門を塞ぎます。 巣箱がボロいのでテープで塞ぎました。 |
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元群の近くに置く 準備した巣箱を元群の側に置きます。 当たり前ですが、遠くに置くと巣枠を移すのが面倒になります。 |
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元群の巣箱を開ける 巣箱を開けないと、巣枠が取り出せないので開けます。 |
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元群を内部検査(内検)する 元群を内検をして、蜂蜜や花粉が溜まってる巣脾枠、卵・幼虫・蛹が多い巣脾枠、女王蜂が居る巣脾枠を確認してください。 |
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元群から巣脾枠を移す (群の分割) 適当に巣脾枠を取り出して用意した巣箱に移します。 分割群には、 食糧が多い巣脾枠を1枚、卵・幼虫・蛹が多い巣脾枠を2~3枚移せば問題ないでしょう。 巣脾枠一枚でも分割群を作れますが、群が小さすぎると環境の変化に弱く全滅しやすくなります。(初心者には3枚群を推奨) 群を分割時に、どちらを有王群にするか決めてください。 私は元群を有王群にする事が多いです。 |
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分割群を元群の近くに置く場合、分割群には蛹が多い巣脾枠を入れて下さい。巣箱に閉じ込めている間に大量に羽化します。 |
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分割群の巣脾枠の配置 画像の様に取りだした巣脾枠を配置して下さい。 食糧が多い巣脾枠(貯蜜枠)を一番外側にして、卵・幼虫・蛹が多い巣脾枠(有児枠)を巣箱の壁側にして下さい。 卵・幼虫・蛹が多い巣脾枠(有児枠)は、ミツバチが効率よく保温できる場所に設置するのが基本です。 |
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餌を与える 分割群に餌を与えます。 給餌枠があるなら、そこに砂糖水を入れてください。 食糧を沢山もっている場合は、与えなくても大丈夫です。 |
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フタを閉めます。 群分割後は早めにフタをします。 長時間巣箱を開けていると、巣枠に付いている働き蜂が元群へドンドン戻っていきます。 |
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元群の巣枠を整える 元群の巣枠配置も分割群同様に先ほど説明した通りです。有児枠を貯蜜枠と巣箱の壁で挟んで下さい。 貯蜜枠が無い場合は、新しい巣礎枠を一番外側にして追加して下さい。 |
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分割終了 元群と分割群に分けました。 女王蜂が居ない群(無王群)は、2~3日すると卵や幼虫から変成王台を作り始めます。 |
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分割群の置き場所(元群から遠い場合) 分割した群を元群から2~3km離れた場所に置くなら、何も問題は起きません。ミツバチが元群に戻る事がないので、分割した全てのミツバチが分割群に残ります。 しかし、群を長距離移動させる事になるので輸送中の蒸殺だけには気をつけましょう。 蒸殺を防ぐには、換気の良い巣箱を使ったり、気温が低い(20度以下)時に輸送しましょう。 |
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分割群の置き場所(元群から近い場合) 分割群を元群の近くに置くと、分割群のミツバチが徐々に元群に戻っていきます。 それを防ぐには巣門を2~3日開けないことです。巣箱にミツバチを閉じ込めている間に多くの蛹が羽化します。 巣門解放後は、多くのミツバチが元群に戻る事がありますが、羽化した若い蜂が増えているので分割群のミツバチが減りすぎるという事態を避けれます。 ミツバチを監禁する際の注意点は下記になります。 ①換気を良くする。 ②涼しい場所に置く。 ③夏など気温が高い時期は監禁しない。 ④監禁前に大量に給餌する。 ⑤強群は蒸殺の恐れがあるので監禁しない。 |
分割群を元群の近くに置くと、最終的に外勤蜂の数に大きな差がでます。(外勤蜂の数=花蜜・花粉の取得量) その結果、元群は外勤蜂が多いので蜜や花粉が溜まり易く、 逆に分割群は若い内勤蜂が多く餌不足に成りやすくなります。 分割群が食料不足にならないように、砂糖水や代用花粉を状況を見て与えてください。
二つ目の方法は、「多くのミツバチが元群に戻ってしまうなら、予め大量のミツバチを分割群に入れておけば良い。」という荒っぽい方法です。
何も考えずに分割した場合 A群(6枚群)を3枚群に2分割した例を見てみましょう。A群のミツバチ数は10000匹とします。 |
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何も考えずに分割した場合(結果) 分割直後はA群・分割群ともミツバチ数に差はありませんが、時間が経つと分割群からA群に多くのミツバチが戻ってしまいます。 |
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ミツバチ数を調整して分割した場合 では、分割する際にミツバチ数に差をつけるとどうなるでしょうか? ミツバチ数の調整方法は、A群の巣脾枠に付いているミツバチを分割群に振るい落とします。 応用: 他群のミツバチを分割群に合同させても良いです。 |
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ミツバチ数を調整して分割した場合(結果) 分割群からA群に多くのミツバチは戻りますが、分割群の方に予め多めにミツバチを入れているので、分割群のミツバチが減り過ぎるという結果を避ける事が出来ます。 |
上記で説明した工夫を凝らしても、分割群のミツバチが著しく減ってしまう事があります。 その時は他群からミツバチを合同させる等・・・臨機応変に対応して下さい。(群合同の方法 ・ 余剰ミツバチの合同 ・ 若いミツバチの集め方)
ミツバチの記憶を利用した群分割方法を紹介します(パグデンメソッド)。
この方法は、「多くのミツバチが元群に戻ってしまうなら、戻ってきたミツバチで新たに群を作ればいいじゃない。」という少し発想を変えた方法です。 |
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まず、分割したい群を巣箱ごとテキトウな場所に移動させます。 | |
次に元の場所に、新しく巣箱を設置します。
新しい巣箱には巣礎枠1~2枚と元群の巣脾枠を3枚程設置します。(テキトウで良いです。) 外部の記憶を持ったミツバチは、どんどん新巣箱に入っていきます。 時間があるなら新巣箱側に女王蜂も移しましょう。 新巣箱側は歳を取った蜂が多くなる為、すぐに産卵できる女王蜂が居た方が都合が良いです。 |
上記の方法の注意点は、新巣箱と元巣箱の距離が近すぎると新巣箱側に記憶を持ったミツバチが移りづらくなるので、新巣箱と元巣箱は最低でも3~4mは離す事をお勧めします。 元巣箱側は外勤蜂が少なく餌不足になり易いので給餌をして下さい。
ミツバチの記憶を利用した群分割方法を紹介します(よく見かける方法)。
この方法は、「多くのミツバチが元群に戻ってしまうなら、元群の超近くに分割群を置けばいいじゃない。」という方法です。 まず、元群から分割群をつくり、分割群の巣箱は元群の真横に置きます。 ミツバチの帰路が元群と分割群の真ん中になるように、元群と分割群の巣箱を少し動かして調整します。ミツバチがバランスよく両方の巣箱に入っていけば完了です。 最終的には女王蜂の居る巣箱に多くミツバチが残ることになりますが、両巣箱とも極端な蜂不足にはなりずらいです。 |
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実際にこの分割方法を行った状態です。分割群には元群の働き蜂も入るので、極端な蜂不足になりません。 巣箱を2つ置けるスペースがあるなら、お勧めの方法です。 |
ミツバチにとって群分割は分蜂する事と同じです。 自然王台が沢山作られる群を分割すれば分蜂熱が弱くなります。