一度設置した巣箱は、ミツバチが巣箱の位置を記憶しているので簡単に移動させる事はできません。ここでは短距離・中距離・長距離の移動方法を説明しますが、どの方法も巣箱の移動には手間が掛ります。
ミツバチの記憶に関しては、こちらを参照して下さい。
設置した巣箱を短距離移動させたい時は、1日に約50cmづつ動かす事を推奨します。
推奨できませんが、1日に1~3m動かしても時間は掛りますが働き蜂は自分の巣箱に戻れます。但し、働き蜂がなかなか巣箱に戻れなくて、元の巣箱の位置が働き蜂で大混乱になります。人が住んでいない山奥で実行するのは大丈夫ですが、近くに民家ある場合は絶対止めましょう。
群の短距離移動のまとめです。
外勤蜂の帰還経路とは? 外勤蜂は自分の巣箱(巣門の位置)をしっかり覚えています。巣門から飛び立ち花蜜や花粉を集めて、また巣門に戻ってきます。 |
|
巣箱を後ろにズラした場合 移動させた巣箱(巣門)が帰還経路の延長線上にあるので、他の方向より比較的短時間で移動させた巣箱(巣門)に戻れます。 |
|
巣箱を左右にズラした場合 あまり左右にズラし過ぎると、移動させた巣箱(巣門)に戻るのに時間が掛ります。 |
|
巣箱を前にズラした場合 巣箱を前にズラすと、なかなか巣門を見つけられず元の巣門付近が外勤蜂で大騒ぎになります。 巣箱を前に移動させる時は、1日25cm位づつ移動させましょう。 |
|
巣箱を反転させた場合 一見、問題無いに思えますが・・・これも外勤蜂は巣門をなかなか見つけられません。 巣箱を反転させる時は、1日で反転(180度回転)させず、3回(1日60度回転)に分けて反転させて下さい。 |
|
巣箱移動直後のミツバチの行動
ミツバチは巣箱の位置が変わると、巣門付近でお尻を上げて羽ばたきフェロモンで仲間に巣箱の位置を知らせます。 これにより、多少巣箱の位置が変わってもミツバチは自分の巣に戻る事ができます。 |
巣箱が置かれている場所・移動方向によっては、巣門にミツバチが中々戻れない事が起きます。そういう時は、1日に動かす量を更に少なくして下さい。 逆に、簡単に巣門に戻れるようなら1日に50cm以上動かしても構いません。 相手は生き物なので臨機応変に対応して下さい。
巣門を半分以上閉じた時の動画です。この様に巣門の位置が少し変わるだけで、ミツバチは中々巣箱に入れなくなる事もあります。(1時間後には9割のハチが巣箱に出入り出来るようになっていました。)
群を中距離移動させたい場合は、2~3km離れた場所で2~3週間ミツバチを飼い群の記憶をリセットしてから移動させると上手くいきます。外勤蜂の寿命は1~3週間なので、離れた場所で飼育している間に元の巣箱周囲の記憶を持った外勤蜂は死んで入れ替わっています。
一時的に離れた場所に群を移動させてまた近くに戻す方法は、地形的に短距離の移動が難しい場所や、巣箱を100~500m移動させたい時に利用できます。 この方法の欠点は、群の長距離移動を2回する事になるので大変手間が掛ります。
短距離の移動と違い、巣箱を長距離移動(輸送)させるには労力が要ります。 詳しくは、蜂群の輸送を参照下さい。巣箱の長距離移動は大変ですが利点もあります。 それは、元の巣箱の位置から3km離れた場所なら、ミツバチの記憶を考慮せずに好きな所に巣箱を置く事ができます。
巣箱を1km移動させた時と3km移動させた時の違いを図に表しました。
1kmの移動では、一部のミツバチは元の巣があった場所に戻ってしまいます。
3kmも移動させれば、ほとんど元の位置に戻るミツバチは居ません。
注意: 群の長距離移動には蒸殺のリスクが伴います。 群が大きすぎる場合(8枚群以上)や気温が高すぎる場合(30度以上)は、特に注意が必要です。
群の長距離の移動についてですが、養蜂教本などにはこう書かれています。
「元の巣箱の位置から2~3km以上離れた場所に移動させないと、ミツバチは元の巣箱の位置に戻ります。」
本当か確かめる為、1km先の新しい養蜂場に群を移動させる際、試しに1日で20群持って行きました。本に書かれている事が確かなら、外勤蜂は群が置かれていた元の場所に全部戻ってくるはずです。
予想に反して、元の位置に働き蜂の一部は戻ってきましたが、移動させたその日から1km移動させた20群全部が正常に活動し始めました。ちゃんと蜜や花粉を取りに行って戻ってきます。
当たり前ですが、この一部の働き蜂も群の重要な戦力です。しかし、養蜂する場所が1ヶ所しか無い方や養蜂場を2~3km離す余裕が無い時は、この一部の働き蜂を犠牲にして群を移動させる事が出来ます。
戻ってきてしまった一部の働き蜂は2~3日すると居なくなります。 戻ってきた蜂が多い場合は、元の巣箱近くに集落を作りますが女王蜂は居ないので1~2週間で消滅します。近くに民家があり、迷惑になりそうなら殺虫スプレーで戻ってきたミツバチを駆除して下さい。
ミツバチの記憶を無視した移動は、外勤蜂が極端に減り群に大きな負担を掛ける可能性があります。避けれない事情が無い限りやらないでください。