蜂蜜が沢山取れる条件をシンプルに表すと下記の3つになります。
蜜源植物が巣箱周辺に無いと当たり前のように蜂蜜は採れません。そして、花なら何でも良いという事もありません。園芸用の花等は、見た目は綺麗ですが花蜜を出す種類は少ないです。 (例として、沖縄の主要蜜源植物は雑草のセンダングサです。 山が多い北部だとアザクラ・ミカン類も蜜源なります。) 蜜源植物の開花の時期を知っていると計画的にハチミツを採る事ができます。
一部の植物(ツツジ科)の花蜜は、グラヤノトキシンという毒を含んでいますのでツツジが多い場所採れたハチミツを食す場合は注意です。
花が多く咲いていても働き蜂が少ないとハチミツは中々溜まりません。 開花期間が一週間位の蜜源植物もあるので、その時期にまでに強群を育て開花に備えます。 初心者の内は、標準巣箱を充満群(9枚群)にする事を目標にして下さい。養蜂に慣れてきたら巣箱2段群にチャレンジしてみましょう。
強群とは働き蜂が多い群の事を言います。一般的には2段群位からを強群と言うようです。 強群の集蜜力は高く、多くの蜜源植物を独占できる土地なら一群から何十キロもハチミツが採れます。 逆に弱群(働き蜂が少ない群)の集蜜力はとても低く、なかなかハチミツが溜まりません。 |
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一般的な2段群の働き蜂数は約2~3万匹です。ミツバチ達は強群になると集蜜力が飛躍的に高まりますが攻撃的になります。 また、強群は放置してるとほぼ確実に分蜂するので、一週間に一度は必ず内部検査をし、王台があれば全て潰し分蜂させないようにしましょう。 誤って分蜂させてしまうと、群が小さくなり集蜜力が落ちます。 強群は、攻撃的+王台探しの内部検査がとても大変という事を肝に銘じましょう。 |
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凶暴な強群は煙でも完全に鎮める事ができません。 煙を吹きつけても働き蜂が巣箱からどんどん湧いてきます。 少なからず攻撃してくるので、内部検査が嫌になってきますがハチミツを採るまで我慢しましょう。 もし、強群の維持・管理が嫌になったら、ハチミツは諦めて強群を人為的に2~3群に分割して小群化しましょう。分割後、女王蜂が居ない群は変成王台を作り始めます。 |
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写真中央のピーナツの形をしたのが王台です。1つでも潰し忘れると、新女王蜂が誕生してしまい分蜂してしまいます(運が良ければ王台が羽化せず分蜂しない事も・・・)。 王台を探すときは、事前に巣脾枠を軽く振り、働き蜂をある程度落としてから内部検査すると王台発見が楽になります。王台は巣の四隅に作られる傾向があるので、四隅は念入りに確認しましょう。 |
基本的に、9枚充満群になったら巣箱に継箱を乗せ2段にしミツバチに増えるスペースを与えます。2段群にする際の注意点ですが、2段にするタイミングが早い(蜂数が少ない)と、群の増勢がガクッと落ちます。その場合は、また1段群に戻してください。
巣箱が2段になれば、巣箱と継箱の間に隔王板を設置できるようになります。隔王板の隙間は4~5mm(製品より微妙に異なる)になっています。働き蜂は4~5mmの隙間を行き来できますが、女王蜂は体が大きいので出来ません。 それを利用し女王蜂の巣箱・継箱間の移動を制限できるようになります。 補足: 体の小さい女王蜂は、時々隔王板をすり抜ける事があります。 |
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単純に1段満群を2段群にし隔王板を使用した図です。通常は、女王蜂は下段(巣箱)に残るようにします。 女王蜂を下段に残す理由は、ハチミツは巣の上部に貯められやすいからです(実験したページ)。 また、上段継箱を産卵場所にしてしまうと、上段で生産されたオス蜂が隔王板を抜けきれず隔王板の隙間に引っ掛かり大量死する事があります(死骸の除去が面倒です)。 |
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通常、女王蜂を下段に残すと継箱に置いた巣脾枠は蜂子無しの綺麗な貯蜜枠になります。 働き蜂をさらに増やす場合は、女王蜂が居る下段巣箱に巣枠(巣礎枠や巣脾枠)をどんどん追加し産卵させます。 働き蜂を増やしたくない場合は、女王蜂が居る下段巣箱に仕切り枠(造巣を止める)を設置し、女王蜂の産卵を制御(産卵スペースを無くす)できます。 ただし、ミツバチは造巣できる場所が無くなると、分蜂熱が発生する事が多いので、仕切り板を設置せず、巣礎枠を与え造巣させておくのも一つの手です。与えた巣礎枠が巣脾枠になったら、取り出し他群に与え、また新しい巣礎枠を与えます。 |
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一応、隔王板を使わなくても蜂蜜は溜まります。その場合、蜂蜜は巣箱の一番隅の巣枠(貯蜜枠)に溜まっていきます。 継箱や隔王板を使わないお手軽な方法ですが、女王蜂の行動を制限していない為、色々な所に産卵され綺麗な貯蜜枠に成らない事が多いです。 貯蜜枠に幼虫や蛹が居ると、ハチミツを搾る時に取り除くのが面倒です。 |
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蜂蜜が沢山溜まった貯蜜枠は、1枚3.3kg位になります。 回収した貯蜜枠の数で、採れるハチミツの量が予測できます。 |
細かい技術的な事を長々と書いていますが・・・群が大きく且つ周囲の蜜源植物が豊富(独占できる状態)なら、飼育者が何も考えなくても大量のハチミツが巣に溜まっていきます。細かいことが嫌いな人は、これだけ覚えておけばOKです。
ある程度養蜂経験を積んだら、西洋ミツバチ掲示板に記載されている方法を参考にすると、さらに多くのハチミツを集める事ができるでしょう。
最上段継箱部分にハチミツが溜まります。一番下の空巣箱は、分蜂熱を抑えるために設置しているそうです(造巣させるスペース)。
個人的に、とてもバランスの良い採蜜群になると思います。分蜂熱対策に光るものがあります。 |
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採蜜に特化した働き蜂大量の無王3段群を、強群同士を合同する事で作ります。
群合同後は、空巣脾枠を大量に追加しハチミツを大量に貯めさせます。白色=空巣脾枠、赤色=有児枠、黄色=貯蜜枠。 この採蜜特化群を作るには、強群育て・群合同・余った女王蜂や有児枠を預ける群・その後の処理等・・・様々な養蜂知識・経験が必要になります。 |
自分オリジナルの採蜜群構成を考えるのも、養蜂の楽しみの一つだと思います。
集蜜力が強い強群を一ヶ所に沢山おいても、養蜂場周囲の花数には限度があり、ミツバチが得られる花蜜の総量も限られています。その為、採蜜群の数は、養蜂場周囲の蜜源植物が出す花蜜量を考慮して決めることになります(花蜜量は1~2年同じ場所で養蜂しないと把握できません)。 花数の少ない場所では、強群1群位が適正です。
採蜜群は、土地の蜜源植物が出す花蜜量を考慮した群数を置いて下さい。群を置き過ぎると、ハチミツが全く溜まらないどころか、常に花蜜や天然花粉不足で全群の増勢が悪くなります(強群化に時間が掛かる)。
飼育する群数が少ないほど、各群にとっては花蜜や花粉を奪うライバルが少なく好条件となります。 |
私は沖縄本島北部の養蜂場で40~50群ほど飼育していますが、そこではアサグラが咲く季節以外はハチミツがほとんど溜まりません。 養蜂場周囲の花蜜量より、養蜂場で飼育されているミツバチ数(花蜜・花粉の消費量に影響)が大幅に上回っている場合はこのような事が起こります(10群くらいまでは餌無しでもモリモリ増えました)。
他にもハチミツを狙う場合は、近くの養蜂家(自分の養蜂場から3km圏内)が飼育している群数にも気を付ける必要があります。
近くに大群を飼育している方が居るとミツバチが多すぎて、花は沢山咲いていても花蜜の取り合いで蜂蜜が採れなくなります(一か所で大群飼育していると同じ)。 私が行っている近くに大群飼育者が居るか居ないか推測できる方法を説明します。 沖縄の場合: まず、センダン草が群生している所を探します。3~5ヶ所ほど探して下さい。(沖縄県外の方は、ミツバチが良く訪花する植物を利用して下さい。) |
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ミツバチが訪花しているか観察します。 簡単に2~4匹見つけられたら、近くで養蜂をしている人が居ます。 花が群生してる場所全てでミツバチが簡単に確認できた場合、そこで蜂蜜が採れる可能性は低いかもしれません。 |
現在、蜂蜜を採る為に何ヶ所かで1群飼いをしていますが・・・沖縄は土地が狭いのに養蜂家が多くハチミツを大量に採るのが本当にキツイです。
1群を漁港の製氷棟の踊場(赤印)に置かせてもらいました。 海沿いなので周りに養蜂している人も居ないです。 周囲に養蜂家は居ないですが、海沿いは風が非常に強くミツバチに過酷な条件と思われます。 |
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ひめゆりの塔近くの漁港です。 |
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まだ小群ですが、蜂蜜が少しずつ溜まってます。 近くに良い蜜源が有るという事です。養蜂家が居ない海沿いは案外穴場なのかもしれません。 |
追加情報: 1年半位、海沿いで養蜂しましたが、この群は2段群まで成長しました(ハチミツは2kgほど溜まった)。 この結果から海沿いでも、餌がそこそこ豊富+近くに養蜂家が居ないなら少数群の飼育可能と判断しました。
ただし、海沿いは風が強すぎて越冬が難しいと感じました(暖かい沖縄県でも難しかったです)。 もし、防寒対策が難しいなら、冬は他の場所に巣箱を移した方が良いでしょう。
豆知識①: ミツバチが集めた蜂蜜は、多くが保温と育児に使われます。その為、開花期直前に女王蜂を隔王籠に一時的に閉じ込め、産卵を強制的にストップさせると・・・幼虫数の大幅減少 → 働き蜂の保温・育児負担の大幅減少 → 結果、蜂蜜が大量に溜まります。 ただし、女王蜂隔離の影響で変成王台が作られるので分蜂に注意です。
豆知識②: ハチミツは糖度が低いと発酵してしまいますが、ハチミツの糖度が80%前後あれば、発酵せずに長期間保存が可能です。採ったハチミツがサラサラしている場合は、糖濃度が低く発酵する恐れがあるので注意して下さい。
糖度を測る機器(糖度計)も販売されていますが、目視でもある程度糖度が解ります。 目視でハチミツがドロドロして粘度が有れば糖度80%位です(発酵しずらい)。 サラサラとあまり粘度が無い場合は75%位の糖度です(徐々に発酵する)。 粘度が無く水の様な感じのハチミツは糖度70%以下です(よく発酵する)。
一度、市販されているハチミツを購入観察しドロドロ感を覚えておきましょう。また、ハチミツ(糖度約80%)の比重は約1.4なので、100mlのハチミツの重さを測る事でも糖度がある程度わかります。例:100mlのハチミツの重さが140g前後であれば十分な糖度があることになります。
糖度が低いハチミツは、鍋等で熱して水分を蒸発させる事で糖度を上げる事ができます。しかし、花の香り等も一緒に揮発してしまうのでお勧めしません。 十分な糖度のハチミツを得るには、蜜蓋が全体の50~70%程された貯蜜枠を使用して下さい。(下の画像参照)
簡易的な蜂蜜の搾り方はこちらを参考にして下さい。