餌には、即効性(水分が多い)と緩行性(水分が少ない)があります。餌を与える時は、この2種類を状況に合わせて使い分けると良いでしょう。
即効性餌(砂糖水・液糖)の特徴は、働き蜂を刺激して活動的になり女王蜂の産卵も促進されます。即効性の餌を与えると活発になった働き蜂が巣箱から多く飛び出してきます。 また、砂糖水は巣箱内の湿度補給にもなります。
緩行性餌(固体の砂糖)の特徴は、食べるのに時間が掛るので働き蜂を刺激しません。 働き蜂を活動的にしたくない季節(冬)に与えるのが良いでしょう。 働き蜂は、動けば動くほど寿命が短くなるので越冬中は余計な刺激を与えない方が良いです。 また、砂糖固体は巣箱内の湿度を吸うので雨が多い時にも有効です。
砂糖水 糖濃度: 50%前後 お手軽に作れますが、液糖や砂糖固体と違いカビが生えたり発酵します。 また、水分が多いので寒い季節の給餌には不向きです。 |
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液糖 糖濃度: 80%前後 水分が少ないので寒い季節にも対応できます。糖濃度も高く便利な餌です。 |
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砂糖固体 糖濃度: 93%前後 砂糖をそのまま与えるので、餌作りの手間は掛かりませんが食いが悪いです。また、一部の砂糖固体をミツバチがゴミと勘違いし巣箱外に捨てる事もあり、給餌歩留まりが砂糖水と比べ劣ります。 |
砂糖水・液糖・砂糖固体に代用花粉を混ぜる事も出来ます。花粉が不足気味の群には代用花粉を少し混ぜてあげましょう。
ミツバチに砂糖を与えると、与えただけ食べてしまいます。 食べた餌は、花蜜と同様に育児・巣作り・働き蜂の活動エネルギーに使われます。 余った餌は貯蜜されるので無駄になる事はありませんが、餌を与え過ぎると働き過ぎでミツバチ(働き蜂)の寿命が短くなったり、貯蜜が増え過ぎて巣房がほとんど蜂蜜で埋まってしまい、女王蜂の産卵する場所が無くなるので注意して下さい。
上記の注意点を考慮して、給餌する際は群が持っている貯蜜量を内部検査である程度把握してから与える餌の量を判断して下さい。貯蜜が十分にあるなら砂糖を与える必要はありません。(貯蜜が2kgもあれば十分です。)
ミツバチは、砂糖水や液糖に溺れて死んでしまう事があります。表面がツルツルの給餌器や粘度が高い餌を与えた時に溺死する事が多いです(対策すれば溺死しません)。
上の写真は砂糖水に浮いているミツバチです。ミツバチは砂糖水に浮きますが、給餌器から長時間這い上がれないと力尽きて溺死します。
上の写真は砂糖水に沈んでいるミツバチです。 ミツバチは、体の表面の細かな毛のおかげで頭からお腹まで撥水性になっています。この撥水性のおかげで水に浮いたり、水中で少し動くことができます。
ただし、不純分が多い又は糖度が高い餌は、ミツバチの細毛の隙間に容易に入り込みミツバチがすぐに溺死する事があるので注意が必要です(撥水にならない)。
上の写真は、プラスチック給餌枠内で溺死したミツバチ達です。 表面がツルツルの容器は、ミツバチが溺死しやすいので、給餌器内部に足場を作りミツバチが溺死しないようにして下さい。
足場は、表面がガサガサしており水に浮くものであれば使用できます(例:木の棒や発泡スチロール等)。
(2点)浅いトレイに砂糖水を入れて巣門前に置く ミツバチに慣れていない養蜂初心者向けの方法です。 巣箱を開けずに餌を与える事ができるのでお手軽ですが、大量に餌を与える事ができないのが欠点です。 砂糖水に少しハチミツを加えると、ハチミツの香でミツバチに認識されやすくなります。 注意点:砂糖水を飲みに来たミツバチが溺死しないように、画像のように足場(ここでは石)を必ず作って下さい。 |
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(3点)大きい容器に砂糖水を入れて巣箱の近くに置く 巣箱を開けずに多くの砂糖水をミツバチに与える事ができます。 巣箱から離れた場所に容器を設置すると、ミツバチが砂糖水を認識できない事があるので注意です(解決策はこちら)。 この方法の欠点は、複数群を飼ってる場合は餌の取り合いになり貯蜜が少ない群に優先して餌を沢山与える事ができません。 また、スズメバチに餌場を発見されてしまうとスズメバチが大量に集まってくるので注意が必要です。 |
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補足:大きい容器使用時の溺死対策について PE製(水に浮く)ロープを容器に入れると、ミツバチの足場になり溺死を極力防ぐことができます。 PE製ロープは、安い・強い・容器の形状を選ばないと3拍子揃っているのでお勧めです。 |
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(5点)べニア製の給餌枠を巣箱内に設置する 最も一般的な給餌方法で欠点はありません。 一度に多くの餌を与えられます(砂糖水が1~2L入ります)。 ベニア製の給餌枠は、ミツバチが滑らず溺死が起きずらいです。また仕切り板としても使え便利です。 |
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(4点)プラスチック製の給餌枠を巣箱内に設置する 色々なサイズのプラスチック給餌枠があり、自分に合った給餌枠を選べます。 旧型のプラスチック製給餌枠は容器内側がツルツルでミツバチが滑りやすいので、使用する場合は給餌枠内に足場材を沢山入れミツバチが溺死しないようにして下さい。 最近のプラスチック給餌枠は、容器内部が二つに分かれており砂糖水と代用花粉を別々に入れる事が出来ます。また、容器内側はガサガサしており溺死対策がされています。 浅い給餌枠には、代用花粉を大量給餌できるという利点があります。 |
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(3点)ペットボトル給餌器を使う ペットボトルに取り付けて使用するタイプの給餌器です。 巣門に突起部分を突っ込み、巣箱を開けずに給餌する事ができます。 形状的に、ミツバチの溺死が一切起こらないという利点があります。 汎用性が高く、まあまあ使いやすい給餌器だと思います。 |
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(2点)トレイを巣箱の底に設置して餌を与える 小さなトレイを巣箱の底に置きます。巣箱内部にトレイを置くので餌の認識が早いです。 欠点は、巣箱の底にトレイを置けるだけのスペースが必要です。 主に弱群用の給餌方法です。 |
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(2点)トレイを巣枠の上に設置して餌を与える トレイを巣枠の上に設置して餌を与えます。(自分はこの方法を採用しています。) 欠点は、一般的に売られている標準巣箱では巣箱上部にスペースが無いためトレイを置く事ができません。(自作巣箱専用の給餌方法です。) |
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補足:砂糖固体(緩行性の餌)の与え方 給餌器やトレイの中に直接砂糖を入れて下さい。砂糖水と違い溺死する事はありません。 砂糖(固体)の給餌は、砂糖水や液糖を作る必要が無くとても楽な方法ですが、食べるのに時間が掛かるので餓死寸前の群にはお勧めできません。 |
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補足:砂糖固体の食いを良くする方法 砂糖固体だけでは嗜好性が悪いですが、液糖やハチミツを少し混ぜてあげると食いが良くなり餓死寸前の群にも対応できる餌になります。 |
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(1点)ミツバチに砂糖水や液糖をぶっかける とても雑な方法ですが・・・楽です。砂糖水を注ぎ過ぎると巣箱の底から漏れて無駄になります。 巣箱から漏れた砂糖水にアリが沢山寄ってくる事があるので、アリが多い場所ではこの方法は使わない方が良いです。 |
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(2点)空巣脾枠に液糖(ハチミツ等)を入れる。 人間が直接巣房に液糖を入れる方法です。他の給餌方法と比べ、手間が掛かりますが人工的に貯蜜枠を作れます。 1枚の空巣脾枠に1~2kgの液糖(ハチミツ等)を入れる事ができます。 この方法は、ミツバチへの負担が最小なので、貯蜜枠が足りなそうな越冬群におススメです。 |
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補足:空巣脾枠に液糖(ハチミツ等)を入れる まず、空巣脾の上に液糖(糖濃度80%前後の粘度がある物)を大量に垂らします。 そのままで液糖が巣房に入りませんので、手で優しく液糖を伸ばしながら巣房内に入れていきます。 片面の液糖詰めが終わったら、巣脾枠をひっくり返し反対側の巣房にも同様にして液糖を入れます(裏返した際、少し液糖が垂れます)。 一枚当たり、5分位で作れます。 |
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(1点)巣門の前に餌を垂らす さらに雑な方法ですが・・・巣箱を開ける必要がないのでかなり楽です。 しかし、沢山餌を与える事は出来ません。 |
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(0点)巣門の前にゼリー等の甘い物を置く ミツバチには、ゼリー等を与える事も可能です。何らかの理由でゼリーが余ったら、ミツバチに与え処理する事が可能です。 昆虫ゼリーは、トレハロース(昆虫のエネルギー源)や異性化液糖を主原料にした商品がほとんどです。 タンパク質入りなど色々な種類がありますが、昆虫用に設計されているゼリーであればミツバチが食べても問題ありません。 注意:ゼリーは開封後に長時間放置してると乾燥して硬くなりミツバチが食べなくなります。 |
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(0点)巣枠の上に昆虫ゼリー等を置く 巣枠の上に昆虫ゼリーを置くと良く食べます。あくまで餌を作る暇が無い時の臨時食として与えましょう(プロテイン入りがお勧め)。 |
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補足:弱群はアリに注意! 餌は、弱群には少なくこまめに与えるのが安全です。 ミツバチよりアリの勢力が上だと、大量に巣箱に入り込んできて餌を奪います。 最悪の場合、弱群はアリに殺されてしまいます。 情報: ミツバチも中群ほどになると戦闘力が増しアリ群に負ける事はありません。 |
一般的なイタリアン種の西洋ミツバチは、繁殖力が高く育児の為に餌を大量に消費するので、日本ミツバチ(野生種)と比べ餓死しやすいです。 西洋ミツバチの餓死を避けるためには、定期的な内部検査で群が持っている貯蜜量を把握することが大切です。
群の大きさによる給餌量の目安は、「働き蜂の製造に必要な花粉量と維持費」を参考にして下さい。