私の零細養蜂家(副業)としての感想や仕事内容を記載しています。 これから自力でプロ養蜂家を目指す方の参考になれば幸いです。
養蜂業は他の職業に比べリスクが高い割に儲からないので、養蜂家になるにはミツバチという生物に興味が無いと作業が辛いと思います。 また、養蜂は地味で泥臭い作業が多くミツバチに刺され痛い思いもします。 これらの事を受け入れられるなら業としての養蜂家の素質があります。
飼育群数は季節によって変動しますが30~70群です。 季節により作業時間は大きく変動しますが、平均すると週に3~5時間です。
だいたいこんな感じの年間サイクルです。 体力的には暑さが厳しい夏が一番キツイです。 冬は出荷用の巣箱や巣枠作るのが疲れます(完成品を買うと楽)。 25群くらいから内検が面倒になってきて、70群なると完全に肉体労働です。 私は作業時間が限られているので70群が限界ですが、時間に余裕がある方はもっと大群を飼っても大丈夫でしょう。
私の場合は、養蜂場まで100km近く移動しなければならないため、仕事ついでに養蜂場に立ち寄るなどしてガソリン代を節約しています。 養蜂をするためだけに、100km(往復で200kmにもなります)も離れた養蜂場に行く事は時間的・コスト的にできません。
移動が面倒なので、養蜂場は住まいから近い所に作ったほうが絶対にお勧めです。
あるサイトで読みましたが、海外の日系人養蜂家の方が
「蜂という仕事は嫌いではないが,蜂場を巡る人間関係が面倒であること,ミツバチの盗難やミツバチによる農場関係者への刺害が心配であることなどから,生涯の職業としては考えてはいない。」
と言っています。 それだけミツバチを沢山置く場所では色々問題が起きます。 実際、私にも起きました。
私は養蜂を親族の庭で小さく始めましたが、飼育群数が増えるに連れて・・・親族の庭からも追い出され、本業である会社の工場敷地からも追い出され、現在はまったく人気の無い山奥にほとんどの群を移動しました。
みんな初めは「置いて良いよ」と言いました。 しかし、実際に20~50群を置かれるとハチに刺されたり・ハチの糞や死骸の問題が頻発しました。そして最終的には「もうここで飼わないでほしい。 蜂をどこかに移してほしい。」と言われました。
急に大量の巣箱を撤去しろと言われたので、一時は、ミツバチの置き場所が無く廃業寸前にまで追い込まれました。 このような揉め事は精神的に疲れるので人間関係で揉める前に、人が住んでいない場所に主力の養蜂場を作る事を強く推奨します。
養蜂場は蜂の置き場が無くなるというリスクを軽減するため、2~4ヵ所確保する事をお勧めします。
自分の養蜂場が他の養蜂家の養蜂場と近かった場合(1.5km以内)は、蜜源・花粉源植物の取り合いを避ける為、管轄の役場から通達があり養蜂家同士で話し合いになる事があります。 老舗養蜂家の方が教えてくれましたが、養蜂場の場所取りは基本的に早い者勝ちだそうです(法的拘束力はありません)。 そのため、新規参入する養蜂家は、良い場所に陣取れない可能性が高いです。
大群を飼育する養蜂場の確保には、地主さん、近くの養蜂家、近隣住民とのコミュニケーションが非常に重要になってきます。 この辺を疎かにすると、後々トラブルの原因になります。
毎年、地元の養蜂家達が話し合い蜜源植物の権利分配(各自の区域決め)をする地域もあるので、養蜂業を始める前に一度地元養蜂家に話を伺うのが良いでしょう(相手の話を鵜呑みにしては駄目です)。 勝手に巣箱を置いてハチミツを沢山採っていると、地元養蜂家と揉め事が起きる可能性があります。
養蜂は畜産にあたりますが、実際は農業に近いです。 ミツバチの増減は、地域の環境変化に大きく依存しており天候・その他の不確定要素が多いです。 そういう理由で、西洋ミツバチの価格は安定せず時価になっている事が多いです。
自然災害に関しては・・・運です(運が悪いと大変な事になります)。 自然災害に備え過ぎると、コストが掛り過ぎて赤字になるのである程度の割り切りは必要だと思います。 沖縄の場合は、巨大台風に連続して来られると群が滅茶苦茶弱ります。
私は専業で養蜂をしようとは思いません。 70群程度では収入が低く不安定すぎるからです。200群くらい飼育できる時間と群を置く場所があれば、もう少し養蜂に力を入れたいのですが・・・副業は無理です。 養蜂だけで安定して300万以上の利益を出すには、最低でも200群は必要だと感じます。
沖縄県には、2~3養蜂組合がありますが私は入っていません。 組合に加入すると養蜂資材や餌が安く買えるそうですが・・・年間の組合費が万単位で掛かり70群程度なら入るメリットは無いと判断しました。 お住いの地域により組合費は変わりますので、組合費が安いなら入った方が絶対お得です。
2021年3月補足: インターネットの発達により養蜂資材や餌は組合に入らなくても安く購入できるようになっています。
小規模養蜂業ならば、初期投資金額は10~50万あれば何とか形になります。 そういう意味では個人事業としての敷居は低いですが養蜂作業は見かけによらず重労働です。 真夏の内検や出荷時など本当に疲れます。 正直、自分が高齢化したら出荷作業を行える自信がありません。 また、飼育群数が増えると色々準備する物や作業時間も増え、全てを自分一人で行えた少数群の飼育とは異なってきます。
個人で養蜂業をする場合、確定申告をするために簿記の知識が少し必要ですが、下記の本等を読んでおけば問題無いでしょう。 副業の場合、養蜂業が赤字になれば所得税が減額されお金が少し戻ってきますので、確定申告する時は給与所得の源泉徴収票も一緒に提出しましょう。
養蜂は農業(畜産)扱いなので、普通の申告書のようにスラスラ書けない部分が少しあります。そういう時は身寄りの税務署に相談してください。 聞けば解ります。
青色申告の「複式簿記が面倒くせ~」という方は、白色申告にしましょう。 私は面倒なことが嫌いなので白色申告にしています。 昔は青色申告の会計ソフトも購入しましたが、今はエクセルで売上と経費を計算し提出書類を作っています。 「確定申告? 税金? 何それ?」という方は、税理士事務所に経理を全てお任せするのも一つの手です。
私には養蜂の師匠が居ないので、何をするにも経験が無く初めは非常に大変でした。 養蜂業を始めて6年目になりましたが日々切磋琢磨しています。
2021年3月補足: 養蜂歴10年、養蜂業歴8年目になりました。 ここ数年は、他の仕事が忙しい事もあり養蜂実験を行えず養蜂技術の伸びは殆ど無くなりましたが楽しく養蜂を続けています。時間に余裕が出来たら、また昔の様に色々試したいと思っています・・・などという甘えた考えは無く、養蜂作業する時間は無くても思考実験等で養蜂技術を高めるようにしています。
養蜂の参考書は多くありますが、古い養蜂の本はお勧めできません。 昔と今とでは自然環境も変わっていますし、養蜂技術(特に女王蜂量産・ロイヤルゼリーの技術)は、日々進歩しており古い技術だと手間が掛り過ぎます。 日本より一部海外の方が養蜂技術は進んでいるので、そちらの技術を取り入れるほうが効率化を図れます。
そして、初めから何十万もする養蜂セットなどは買わない方が良いです(無駄な物が多い為)。 まずは、最低限の養蜂道具だけを購入し養蜂の基礎からじっくり取り組んで下さい。 1年目は、あまりお金を掛けず3~5群を楽しく飼育しながら養蜂経験を積む位で良いと思います。 1年やってみてもっと飼育出来そうだと思ったら、追加で何群か買ったり必要な養蜂道具を徐々に揃えるのが良いと思います。
私の様に何も経験が無い状態から始める場合は、まず養蜂に適した土地を自力で探してミツバチを30~60群くらいまで増やす事を目標にしてください。 飼育する土地が悪いと増群する事さえ困難なので、年間を通してミツバチが上手く増えない時は、自分の飼育技術が悪いのではなく飼育場所が悪いと考えて下さい。
山奥などに養蜂場を構える場合は、私の様に1人で養蜂するのではなく、2人位で養蜂すると安全で良いと思います。 また、他人と組む場合・大きな取引の場合は、面倒でも覚書・契約書を作り、万が一のトラブルに備える事をお勧めします。 口約束だけで商売してると必ずトラブルの原因になります(経験談)。
巣箱は長持ちするので、はじめは正規品巣箱をミツバチと一緒に購入しても損は無いと思います。 巣礎枠は自分で組み立てて量産するか中国製の安い巣礎枠を購入して使います。 大量に群を増やす予定なら、巣箱は自作し、巣礎枠は外注品にしたほうがコストパフォーマンスが良いでしょう。 養蜂は、道具以外にも、餌代と対ダニ剤に継続してお金が掛ります。 予算を使い切ってしまわない様に注意してください。
ミツバチを増やすのは慣れてくれば簡単です。 しかし販路が無いと増えたミツバチの世話・維持費が圧し掛かってきます。 養蜂業開始2年目くらいにミツバチは沢山いるけど販路が無いという事態に一時陥りました。 こんな事を言っては蜂達に失礼ですが・・・売れないミツバチは単なる金食い虫です。
たまたま他の養蜂家の方がミツバチ不足だったので、激安で20群ほど売りましたが大赤字でした。 その後、色々考えた結果・・・ネット通してお客さんに直接売れば一番儲かるという結論に至りました。 中間業者を通さないので、売り手と買い手の両方がwin-winの関係になれます。
小規模養蜂の場合は、販売できるミツバチ数が少なくミツバチを業者に卸してるだけでは、買いたたかれるだけで本当に美味しくない商売です。 養蜂作業も大事ですが、「独自の販路開拓・養蜂を利用した商品開発等」も進めた方が良いです。
ミツバチが全国的に不足している時は、ミツバチを高値で買い取ってくれる業者もあるので、販路が無さ過ぎる場合は選択肢として有りでしょう。 ミツバチの相場は季節によりますが、蜂児枠1枚(ミツバチ約2000匹付き)で2500~10000円です(重要: 秋は安く、春は高い)。
育てたミツバチを安く売り過ぎると時給500円で労働したほうが安定して稼げるという事態になるので、需要と供給を考慮して、なるべく労働に見合う価格で売りましょう。
ミツバチを無事に出荷できても輸送中に全滅する事が時々起ります。 ミツバチに限らず、生き物の長距離輸送にはリスクが必ずあります。 販売価格は、このようなリスクも考慮して決定して下さい。
また、種蜂の注文を受ける際は在庫に30%ほど余裕を持った方が良いです。 在庫ギリギリまで受注すると、何かが起きた時に在庫が無いという事態になります(例:出荷する予定だった群が上手く増えなかったり、群が分蜂してしまった等)。
あえて大群を飼わず、少数精鋭群でハチミツを狙うのも良いと思います。少数群なら維持費が掛らず投資額が少なくて済みます。
商売をしていると売掛金(代金)の未払いが稀に発生します。完全に防ぐのは不可能だと思うので、売掛金が大きい時は「売掛金が回収できなかった場合」を想定した資金管理をしたほうが良いです。
私の経験則になりますが、売掛金が大きい場合や不誠実な相手を懲らしめたい時は、弁護士に相談し訴訟を起こしたほうが早いです。 特に、支払いの約束を何度も破る不誠実な人を相手にすると精神的にとても疲れるので、一人で悩まず専門家(弁護士)に問題を投げてしまうのが得策です。弁護士への相談料は数千円で済みますので、まずは相談して下さい。
どんなに良い従業員でも「従業員は裏切る」という性悪説を心の中心に持って接した方が良いです(態度には出さない)。 自分は「経営側と従業員は必ず分かり合える」という経営方針で動いてましたが、それが不可能だという事を多くの実体験から学びました。
個人差はあると思いますが、人間の体力は35歳位からガクっと落ちます。運動をしてない人ならかなり極端に落ちると思います。 私は36歳位から仕事のストレス+運動不足+過度の肥満により体力が急激に落ちていきました。 体力が無いので以前の様に養蜂作業ができず、「ああ・・・もう50群の飼育も厳しいかもしれない」と思ったのです。
もう昔のように体は動かないと落胆していましたが、試しに筋トレを始めたら徐々に体が動くようになり、筋力的には昔より強くなりました。 体力は全ての仕事の基本なので、養蜂業に限らず30歳過ぎたら毎日15分位でも筋トレする事をお勧めします。ウォーキングは余り意味無いので、器具を使った筋肥大を狙ったトレーニングがお勧めです。 普通のトレーニングでは、筋肉モリモリのマッチョマンには絶対なりませんので、「マッチョなったらどうしよう」等の悩みは不要です。筋トレ方法を記載した専門サイトは沢山ありますので、筋トレ方法に関してはこの記事には書きません。
零細養蜂家の現状として夢の無い事を書きましたが・・・浦添養蜂園の事は嫌いになっても、ミツバチの事は嫌いにならないでください。 ここに書かれている事は、個人的な経験と感想なので鵜呑みしないでください。最終的には自分で考え決断し行動する必要があります。