内部検査(内検と言います)は重要です。養蜂家の仕事の大部分が内検になります。 週に一回の内検が一般的です。 内検は西洋蜜蜂(ミツバチ)が詰った巣箱に手を突っ込む行為なので慣れないうちは大変ですが頑張ってください。
真夏の内検時は熱中症に気を付けてください。 炎天下の中、作業してたら暑さで吐き気がして危なかった経験があります。防護服を予め水で濡らしてから作業すると涼しくて良いです。スポーツドリンクも忘れずに持参して下さい。
私が知っている養蜂家の方は、防護服や面布を付けずに内部検査をします。ただし、煙を沢山使い蜂を鎮めます。 私は煙を余り利用しないので防護服や面布は必須です。そしてハブが出る環境なので手袋やゴム長靴も必須です。自分の望むスタイル・ミツバチを飼育している環境に合わせた装備で内部検査をして下さい。
天候 内検は晴れてる日にしましょう。天気の良い日は多くのミツバチが外で仕事をしているので、巣箱内のミツバチ数が少なく内検が楽になります。 それ以外にも晴れていると巣房内の卵が確認し易いです。 天候が悪い時は、内部検査を延期して下さい。 |
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①横から観察 巣箱に横から近寄り巣箱入口を観察します。 前回の内検と違った所は無いか調べます。 働き蜂が活発に仕事をしていれば正常です。 |
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②巣箱入口の下を調べる ハチの死骸を観察します。変な死に方のハチが転がってないか調べます。ヘギイタダニが繁殖していると羽が奇形の若いハチが歩いている事もあります。とても重要なので必ずチェックしてください。 |
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羽が奇形のハチ 羽がチジれたハチの死骸。巣箱周囲の異変を見逃さないようにしましょう。天敵のヘギイタダニが大繁殖している可能性があります。 |
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女王蜂の死骸 稀にですが女王蜂の死骸が落ちている事があります。 お腹が小さな女王蜂の場合は、女王蜂同士の戦いに敗れた女王蜂です。巣箱内には未交尾の女王蜂が存在する確率が高いです。 未交尾の女王蜂は小さくて探すのが大変です。 写真の女王蜂はお腹が大きいので他の理由で巣箱から追放されたと考えられます。どちらにせよ女王蜂の死骸を見つけたらすぐ内検してください。 |
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未交尾の女王蜂 写真で解るように働き蜂と体格が似ていて探すのが難しいです。後ろ足が長く歩き方が働き蜂と少し違います。交尾後はお腹が2倍位に伸びるので見つけるのが簡単になります。 |
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交尾済みの女王蜂 写真の真ん中のハチです。お腹が長いです。内検時に見つけると気分的に安心します。 |
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③内検開始 巣箱周囲のチェックが終わったら、内検を始めます。巣箱の斜め後ろに立ちます。巣箱前面(入口付近)はハチの動きが活発なので立たないようにします。
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④くん煙器内の燃える物に火を付けます 私は麻袋を燃やして煙を出しています。燃えずらい時はライターオイルを掛けるとよく燃えます。 煙は木屑が長持ちしますが臭いがキツイです。 |
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⑤くん煙器内の燃える物を燃やす しっかり火が付くまで空気を送ります。 |
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⑥くん煙器内の燃える物が燃えだした 燃えだしたらクン煙器のフタを閉めます。 |
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⑦くん煙器から煙が出る 写真の様に煙が出てくれば準備完了です。煙の持続時間は燃やす物に依存します。色々燃やしてみましょう。定番は木屑です。 |
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⑧巣箱のフタを外す どんな方法でも良いので巣箱のフタを外して下さい。写真の様に巣箱とフタの間にハイブツールを刺し込むと楽に外せます。 基本は静かに外せばOKです。 乱暴に外すと内部のハチが振動で興奮しフタを外した瞬間に飛び出して襲ってくる事があります。(例外としてフタと巣箱が蜜ロウで強固にくっ付いている時があります。 その際は力任せに外すしか方法がありません。防護服つけてれば刺されにくいので、気合いで開けてしまいましょう。) |
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⑨巣箱のフタを外した 外したフタは静かに近くに置きましょう。フタの内側にハチが沢山付いている事も多いので、刺激しないようにそっと置きましょう。写真の様に巣枠の上にタオルや麻袋を置いておくとハチがフタに上がってくる数が減ります。 |
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⑩ハチに煙をかける 写真のように麻袋の上にハチが居るので煙を吹きつけていきます。ハチ達は煙を嫌がって巣の下に逃げていきます。どの位煙を吹きかければ良いかは、ハチ達の状態を見て判断してください。下に逃げていけば十分です。 |
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⑪ハチに煙をかける 麻袋を外した後も全体に煙を吹きつけていきます。大人しい群だと煙を吹付けると素直に下に逃げていきます。 |
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⑪ハチに煙をかける(例外) 凶暴な群だと煙でも下になかなか逃げません。気合いが違います。初心者には大変辛いですが、そういう群には絶えず煙を掛けながら内検をします。 どうしても煙の効果が薄い場合は、砂糖液を散布して蜂の動きを止めるのも有効です。 |
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ハチの巣の構成 大まかに説明すると中心部の巣枠は子育て用として、隅の巣枠は貯蓄用として使われている事が多いです。参考までに覚えて置いて下さい。実際に確認してみると全く違うというケースも時々あります。 |
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巣枠についたプロポリス 巣枠にプロポリス(ガムのような物質)が沢山付いている事もあります。巣枠がプロポリスで巣箱に固定されている時は、ハイブツールで外して下さい。大抵は少し力を入れると巣箱から外れます。 |
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⑫巣枠を取り出す 隅の巣枠からゆっくり垂直に上げて取り出していきます。ハチを潰さないように気を付けてください。 写真の様に片手では持たないでください。巣枠の両サイドを両手でしっかりと持って引き上げて下さい。 |
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⑬食糧をチェックする 一番隅の巣枠は写真の様に蜂蜜を溜めこんでいる事が多いです。ある程度蜂蜜を保存しているか調べましょう。蜂蜜は巣枠の上の部分(赤い範囲)から溜められていくようです。赤い範囲の巣房が空になっている場合は、食糧難になっている場合が多いので給餌しましょう。調べ終わった巣枠は巣箱に戻します。 |
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⑭産卵状態・王台のチェック 中央部分の巣枠は産卵用として使われている事が多いです。卵を産んでいるか巣房を覗いて調べてください。1つの巣房に1つの卵が正常です。女王蜂が産みつけた卵は規則正しく綺麗に産みつけられています。卵が正常に産みつけられている=女王蜂が健在という事です。女王蜂を無理して探す必要はありません。 王台も作られていないか調べます。巣枠の隅や下の方に良く作られます。女王蜂が健在で分蜂させたくない場合は見つけ次第全部潰して下さい。 |
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女王蜂の産卵 女王蜂が産卵してると、巣房の中心部に1個の卵です。 しっかり確認してください。 |
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働き蜂の産卵 写真は働き蜂が産んだ卵です。卵を産みつける場所に規則性が無く、1つの巣房に2個産んでいる所も見られます。何度も書きますが、この状態は働き蜂産卵と言って大変悪い状況です。見逃さないようにしてください。 時々女王蜂が居るのに働き蜂産卵が起こる時があります。原因の断定はできませんが、女王蜂に何らかの異変がが生じていると考えられます。 巣房の内部は太陽光を当てるとよく見えます。 |
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働き蜂の産卵の王台 働き蜂産卵の時でも、王台が作られる事がある。 当然、有精卵ではないので女王蜂は産まれてきません。 王台があるからと言って油断してると、女王蜂が全く産まれず群が消滅します。 気をつけましょう。 |
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王台を潰す前に 王台が作られる条件は主に三つです。①分蜂したい、②女王蜂が居ない、③優れた女王蜂じゃないので更新したい、です。①と③は王台を潰しても問題は起きませんが、②の条件の時に全部潰してしまうと面倒な事になります。王台を潰す前には巣房に卵がしっかり産みつけられている=女王蜂が健在かを確認してから全部潰しましょう。 |
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⑮巣箱の底もチェックする 巣枠が多いと巣箱の底が見えずらいですが、見える範囲で良いので良く調べてください。何か変な物が見つかるかもしれません。 |
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⑯内検終了 巣枠を1枚1枚引き上げてチェックして戻す作業が全部終わったら、巣箱を開ける前の状態にして戻して内検は終了です。文章にすると長いですが、実際やってみるとサクッと終わります。フタを閉める時にハチを潰す事が多いので、邪魔なハチは手で掃って下さい。ハチは手で掃ったぐらいでは死なないので遠慮なく払い飛ばして下さい。 |
内検まとめ:巣箱の周囲調べる→煙を焚く→巣箱を開ける→巣枠を全部調べる→元に戻す→巣箱を閉める。
ハチがフタなどに沢山付いていて、「フタが閉められない!」という人は、フタを地面に叩きつけて蜂を落として下さい。 叩きつける強さは、動画を参考にして下さい。
内検方法は養蜂家によって変わります。私の例は超基本的な内検だと考えてください。
内部検査の効率を上げるには養蜂経験が大事なので、飼育しているミツバチ群数が少ない人はなるべく長くミツバチと触れ合って色々観察して下さい。 飼育ミツバチ群数が多いと短期間で沢山の経験を積めますが、内部検査している時間も比例して長くなる為、体力・集中力が必要になります。