ここでは西洋蜜蜂の交尾と遺伝に付いて簡単に説明します。解りやすさを重視して極端な例えで記述していますのでご了承ください。養蜂をするにあたって、遺伝の細かい事まで知っている必要はありませんが、どうしても遺伝に付いて細部まで知りたい方は、メンデルの法則や生化学を勉強してください。
まずは人間の遺伝について簡単に説明します。人の細胞は、人体の設計図(遺伝情報)を二つ持っています。子供には母と父から1つづつ与えられます。画像中の二つ見える赤点や青点を遺伝情報と考えて下さい。 子供は親に似ていますが親と全く同じ人間は生まれません。持っている設計図が両親とは異なるからです。画像の様に両親と子供の設計図は違います。(子供は赤点と青点を1つづつ持っています。) これで人間の遺伝の説明を終わります。 |
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西洋蜜蜂の交尾に付いて説明します。 女王蜂は空中で複数のオス蜂と交尾して、体内に複数のオスの精子(遺伝情報)を長期間(死ぬまで)保存できます。 とても凄い能力です。 |
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女王蜂は、自分の意思でオスとメスの産み分けが出来ます。 どうやってオスとメスを産み分けるかは次に説明します。 |
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蜜蜂は受精卵ならメスが産まれます。未受精卵はオスになります。 女王蜂は卵を作る時に体内に保存している精子を使うか、若しくは使わないかでメスとオスの産み分けができるのです。 |
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働き蜂(メス)も産卵できますが、交尾をしていないので未受精卵しか産めません。その為、働き蜂が産んだ卵はすべてオス蜂になります。 女王蜂が健在なら働き蜂は産卵しません。 |
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それでは、西洋蜜蜂の遺伝について説明していきます。 西洋蜜蜂もメスは人間と同じで体の設計図(遺伝情報)を二つ持っています。娘蜂は母蜂に似ていますが母蜂と全く同じ娘蜂は生まれません。遺伝する体の設計図が母蜂とは異なるからです。(母蜂と父蜂から1つづつ遺伝する。) オス蜂(息子)は特殊で体の設計図を1つしか持っていません。この事については後で説明します。 |
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オス蜂は未受精卵から産まれる関係で、1つの遺伝情報しか持っていません。姿形は違いますが、女王蜂のクローンの様な存在でオス蜂には父親が居ません。 人間で例えると・・・女性が1人で妊娠し、自分と全く同じ子供を産むという事です。とても怖いですね。自分の複製(ただし男)を量産できる訳です。 補足:減数分裂時の染色体乗換等で、母親と違う子供(オス蜂)になり事があります。 |
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メス蜂の場合、人間と同じです。母親と父親から半分ずつ体の設計図(遺伝情報)を受け継ぎます。一部違うのは、女王蜂が複数のオス蜂の精子を体内に保存している為、父親違いの子が生まれるという事です。 犬で例えると・・・母犬が若い時に関係を持った複数のオス犬の子供を死ぬまで大量に産めるという事です。 |
ミツバチが近親交配に強いと言われてるのは上記の理由(女王蜂が体内で複数のオスの精子を保存)からです。 実際には、近親交配している確率が低く1群から増群しても、全く同じ性質(遺伝)を持った群になる確率が低いのです。
補足①:ミツバチも近親交配を避ける為、交尾飛行の時に同じ群同士のオス蜂と女王蜂が交尾するのを働き蜂達が邪魔するとの事(参考本:みつばちの世界)。
補足②:近親交配による害は、群に多様性がなくなり病気耐性や環境適応能力の低下。二倍体のオスが生まれやすくなり、子育て歩留まりが悪くなる事がある等(参考本:Mating biology of honey bee)。
補足③:ミツバチは減数分裂時の染色体乗換が人間と比べ20倍ほど高い(参考本:Mating biology of honey bee)。