通常、ミツバチに刺されると3~7日ほど刺された部分が大きく腫れ痒みが続きます。 ミツバチに刺された際、早めに毒針を抜くとその後の腫れや痒みが軽減します。 私は仕事(養蜂業)で何度もミツバチに刺されていますが、体がハチ毒に慣れてしまったのか腫れや痒みが殆ど起こらなくなりました。
補足:蜂に刺された後の症状は、その人の体質によって大きく変わります。 刺されても全く腫れない人もいれば、全身が痒く成ったりする人もいます(他の養蜂家やお客様からの体験談より)。
刺された場所の痒みが酷い時は、非ステロイド性鎮痒消炎薬が効きます。 一応、蜂毒は蜂針療法等で使われているのでミツバチの毒に対してそこまで神経質になる必要は無いと思います。 しかし、症状が重い場合は病院で蜂毒のアレルギー検査を受けた方が良いでしょう。
私が始めてミツバチに腕を刺された時は、腕が大きく腫れ痒みで一週間位とても大変でした。 その後、手・足・首・顔・尻等を何度も刺されいるうちに腫れなくなりました。 ミツバチに刺された痛みを一言で表現すると、「注射が下手な看護師に採血された様な痛み」です。 また、毒が体に多く入ってしまうと鋭い痛みが長く続きます。
個人的に刺されて痛かった部位ランキング:
1位・・・爪の間です。 爪の間を刺された時は超激痛が手に走りました。 ここは二度と刺されたくないです。
2位・・・顔です。 顎を刺された時は痛過ぎて・・・「このミツバチの巣箱を燃やしてやろうか?」と一瞬思いました。 その後は顔が腫れてアンパンマンのようになりました。 顔だけは、未だに刺されると腫れが長く続きます。
3位・・・手首です。 手首の動脈部分を刺された時はあまりの痛さに反射的に持っていた巣枠を落としてしまいました。 とても鋭い痛みが2分程続き、一時的に気分が悪く成りました。
私は軽装で作業するのでミツバチに定期的に刺されますが、刺される度に痛いのでなるべく刺されたくありません。
ミツバチに手首を刺された直後の写真です。 刺された箇所が小さく脹らんでいるのが確認できます。
鋭い痛みは1~2分で無くなりますが、時間が経つと炎症が広がり痒みが酷くなります。 |
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毒針は小さいです。長さは2~3mmです。 |
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ミツバチは攻撃対象に付着し毒針を突き刺そうとします。 攻撃してくるミツバチが五月蠅いからと手で掃ったり潰したりすると・・・更に多くのミツバチが興奮して襲って来る事があります(攻撃フェロモンを付けられるため)。 |
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蜂毒の厄介な所は、刺された後に数日続く腫れや痒みです。 痒いからと患部を引っ掻いていると中々治りません。
痒みの軽減には、非ステロイド性鎮痒消炎薬が効果的でした。 痒み止めの薬は、薬局等で取り扱っています。 |
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ミツバチの毒針を顕微鏡で見てみました。 毒針は、針と毒袋で構成されているようです。 ミツバチは人間を刺すと、突き刺した針が人間の皮膚から抜けずお腹から毒袋ごと外れてしまいます。ミツバチ同士の戦いでは、この様な事は起きないので対哺乳類用の毒針では無いようです。 毒針が抜けてしまったミツバチは時間が経つと死んでしまいます。 |
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毒袋は体から取っても10分位動いていました。動画はこちら(ちょっとグロいです。) 動画をパソコンに保存して見てください。 avi形式です。 |
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針の部分を拡大してみました。 |
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針の中に毒液の様な物が見えます。 |
次はミツバチになるべく刺されない方法の紹介です。
ミツバチになるべく刺されたくない養蜂家は、巣箱を開けた時や内部検査中にバナナの皮の臭い(攻撃フェロモン=酢酸イソアミルの臭い)がしてきたら要注意です。ミツバチが大量に攻撃フェロモンを出しています。そのまま臭いを無視して作業を続けると、多くの働き蜂が興奮し襲ってくる可能性が高いです。
大量の攻撃フェロモンへの対策ですが、①煙を吹き付けてミツバチを鎮める。 ②その場から一時的に離れミツバチ達が落ち着くまで5~10分程放置する。 となります。 ミツバチ達が興奮し過ぎていると、煙でも沈静効果が薄いので蜂達が落ち着くまで一旦放置する事をお勧めします。
簡易な防護服(安い虫避け帽子やジャージ等)では、興奮した大量のミツバチに襲われると服の上から刺されてしまいます。 ミツバチが怖い方は全身を覆う養蜂専用の防護服を着て下さい。
ミツバチは仲間を沢山潰されたり、巣箱に強い衝撃を与えた時に興奮しやすいです。 その為、作業中はなるべく蜂を潰さないようにし、且つ巣箱に余計な衝撃を与えないようにゆっくり作業して下さい。
養蜂をしない方ならハチの巣(巣箱)に近づかないのが一番確実です。 特に、巣門付近をウロウロしていると門番蜂が不審に思い偵察しにきます。 もし、ミツバチが自分の周囲をブンブンと疑うようにゆっくり飛んでいたら、早めに巣箱からゆっくり離れて下さい。
偵察蜂に敵と認識され攻撃フェロモンを付けられると、巣箱から数メートル離れても複数の攻撃蜂が追ってきます。 もし、複数の蜂に追われたら応戦せず巣箱から走って離れて下さい。 下手に応戦しミツバチに刺されてしまうと、攻撃フェロモンをより多く付けられ更に多くの攻撃蜂がやってきます。
攻撃フェロモンを付けられ蜂達に追われても、巣箱から30mも離れれば攻撃を諦めてくれる蜂が殆どです。 稀に異常にしつこい攻撃蜂も居ますが・・・そういう時は怒りの鉄拳を攻撃蜂に食らわせて下さい(蜂に刺される前に手でつぶせばOK)。 巣箱から数十mも離れていれば応戦しても増援の攻撃蜂は来ません。
「ミツバチは人を襲撃しない」という実験を行い、それが大失敗(失敗と言うか当たり前の結果)に終わり顔を沢山刺された方もいます。 このような実験は危険なので一般の方は行わないでください。 ミツバチは基本的に温和な生き物ですが、絶対に人を刺さないという生物ではありません。
ミツバチの毒の成分は下記になります。 これらの物質が複雑に生体へ作用しハチ毒の効果(痛み・腫れ・痒み・その他の症状)が現れます。
成分グループ | 化学成分 | %(乾燥重量) |
酵素 | ホスホリパーゼA2 |
10~12% |
ペプチド | メリチン |
40~50% |
リン脂質 | リン脂質 |
1~3% |
生体アミン類 | ヒスタミン |
0.5~2% |
アミノ酸類 | ギャバ α-アミノ酸 |
1% |
糖類 | グルコース・フルクトース |
2~4% |
揮発性物質 | 複数のエーテル類 |
4~8% |
ミネラル類 | リン・カルシウム・マグネシウム |
3~4% |
引用・参考文献:Bee Venom:Composition, Health, Medicine: A Review.