2017年7月14日、晴れです。 沖縄県は暑い日が続いています。

4つのハチミツの検査結果が出ました。 A=偽物、B=本物、C=本物、D=偽物という判定です。 とても無難な結果です。 *検査に出したハチミツの詳細は前の記事を参照して下さい。

結果がネタとして面白く無さ過ぎるので、今回は炭素安定同位体比分析法(SCIRA法)の検査結果の数字の意味が誰でも分かるように解説する事にしました。

検査方法や数値の意味を正確に知りたい方は、下記のリンクを読んでください。
・AOAC Official Method 998.12 C-4 Plant Sugars in Honey Internal Standard Stable Carbon Isotope Ratio(PDFファイルです)
・WHY DOES NEW ZEALAND HONEY FAIL AOAC998.12 C-4 SUGAR ADULTERATION TESTS?(PDFファイルです)

 「こんな面倒臭そうな英文読めるか! もっと簡単に説明しろ! 」という方は先に進んでください。 分かりやすさのみを追及した解説が始まります。 *細かい定義のツッコミは無しでお願いします。

炭素安定同位体比分析法(SCIRA法)の基礎
炭素安定同位体比分析法は、ハチミツに含まれている炭素13という物質の数を調べます。

そして、炭素13の数を基にして、本物ハチミツ又は加糖されたハチミツなのかを判定します。

サトウキビやトウモロコシから作られた砂糖やコーンシロップ(液糖)には、炭素13が花蜜より多く含まれています。 これらの植物はC4植物と呼ばれます。

ミツバチが訪花する植物は、殆どがC3植物と呼ばれる植物です。 C3植物はC4植物より炭素13含有量が少ないという特徴があります。

検査では炭素13を数値で表しますが、数値の表し方がちょっと特殊なので、まずそこを詳しく説明します。

ハチミツに含まれる炭素13の多い少ないは、白亜紀に絶滅したベレムナイト(以後イカと表現)の化石に含まれている炭素13の数と比べて表します。

左の図を観て下さい。

同じ量の塊があった場合、イカには炭素13が100個含まれています。

ハチミツには炭素13が75個含まれています。 イカと比べると炭素13が25個少ないので-25と表示されます。

コーンシロップ(液糖)には炭素13が90個含まれています。 イカと比べると炭素13が10個少ないので-10と表示されます。

ハチミツは基準値(イカ)と比べると、炭素が25個少ないので-25の所です。 殆どのハチミツは、-25前後の値になります。

コーンシロップは基準値(イカ)と比べると、炭素が10個少ないので-10の所です。 コーンシロップやサトウキビの砂糖は、-10前後の値になります。

ハチミツに液糖や砂糖を加えると、ハチミツ中の炭素13の数が増えてしまいます。

検査では、ハチミツに含まれるタンパク質中の炭素13も調べます。

一部の例外を除き、ハチミツとタンパク質の炭素13の数は近い値(-25前後)になります。

検査の数値の表し方が分かった所で、次は実際に検査された各ハチミツの炭素13の数値を見ていきましょう。

実際に検査された各ハチミツの炭素13の数値

ハチミツA

ハチミツAは、80%加糖されたハチミツです。 炭素13は「-14.30」となりハチミツ(-25前後)からとても離れた値です。

*液糖の添加量は68%と判定されました。

ハチミツB

ハチミツBは、国産百花蜜です。 炭素13は「-25.78」となりハチミツ(-25前後)に近い値です。

ハチミツC

ハチミツCは、国産百花蜜です。 炭素13は「-26.20」となりハチミツ(-25前後)に近い値です。

ハチミツD

ハチミツDは、3日毎に砂糖水を給餌した蜂蜜です。 炭素13は「-22.58」となりハチミツ(-25前後)から離れた値です。

砂糖の添加量は10%と判定されています。 3日毎に給餌した割には低い値だと思います。


炭素安定同位体比分析法(SCIRA法)の検査結果まとめ:

殆どのハチミツは、炭素13同位体比の数値が-25前後(-24から-26の間)になります。 また、タンパク質中の炭素13もハチミツと同じくらいの数値になります。


分析結果報告書では、はちみつ中に液糖や砂糖がどの位含まれているかパーセント(%)で表示されます。この数値が7%未満なら液糖や砂糖の混入無しのハチミツと判定されます。


はちみつ中のC4植物由来の糖類の数値が7%以上なら加糖ハチミツと判定されます。 逆に言えば・・・6%までなら蜂蜜中に液糖や砂糖が混じっていても検査上は陰性と判定されます。


炭素安定同位体比分析法(SCIRA法)の依頼方法:

①一般財団法人日本食品分析センターに電話しサンプルの送り先を聞きます。 電話番号は下の写真を参照して下さい。 お住いの近くの営業所に電話して下さい。

②依頼書と一緒に調べたいハチミツ(70g必要)を、指定の営業所に郵送します。 依頼書の書き方が分からない方は、電話で「パソコンが苦手なので口頭でお願いします。」と言えば融通してくれるでしょう。 分析名は、「炭素安定同位体比分析法 たんそあんていどういたいひぶんせき」です。

③ハチミツが届くと一般財団法人日本食品分析センターから連絡があります。 後日、請求書が届くので振込みをします。

④1~2週間経つと分析試験結果が郵送されてきます。

自分は、蜂蜜を4つ調べて8万近く掛かりました。

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