2019年6月中旬、沖縄県は雨期になり大雨の日が多いです。
忙しいを理由に多王群実験が滞っていましたが、このままでは今年は何の進歩も無く終わってしまいそうなので自分に気合を入れて実験を再開しました。
「多王化とは何?」という人のために、多王化技術の概要を説明します。 通常、西洋ミツバチの群れには1群に1匹の女王蜂が存在します(基本的に2匹は存在しない)。 多王化は、人工的に1群に複数の女王蜂を存在させる技術の事です。
多王化技術概要:①年を取ったお腹の大きな女王を2匹以上用意する。②若蜂から構成された無王群を作る。③導入する女王蜂の両牙を切る。④群へ慣らして導入。⑤多王群化という流れです。
情報元:Sustainable multiple queen colonies of honey bees, Apis mellifera ligustica
当初は、③の女王蜂の牙を切る部分が難しすぎると思っていましたが、何匹も牙を切っている内に慣れてきました。慣れればそこまで難しくないです(1匹2分くらいの作業時間)。女王蜂の牙切に関しては、下記の写真を参考に練習すると良いと思います。
自分が使っている牙切の道具です。①ライト付き拡大鏡、②小型ネイルニッパー、③女王蜂気絶用の小型COボンベ一式(水草用)
気絶した女王蜂の持ち方です。このように反対に持つと、私の場合は牙切難易度が下がりました。
気絶させた女王蜂は、上の画像のように舌を出したまま気絶する事が殆どです。
舌が邪魔で牙を切りにくいので、舌をネイルニッパーで奥に押して画像の様に折り畳んだ状態にすると牙が切りやすいです。
現在、多王化への条件を少しでも減らそうと試行錯誤している最中です。
下記の写真は牙を切った3匹の女王蜂になります。女王の毒針も切る予定でしたが、毒針は切れるタイミングが数秒しかない+産卵管?みたいな物を間違って切ってしまったので今後は牙切だけにすることにしました。
今回は、条件①を省略する実験をしています。 王籠に入っている女王は全て5月に交尾した新王になります。
若い蜂から成る弱群へ用意した3匹の女王を預けました。
真ん中の女王が人気があり、多くの働き蜂が王籠に群がっています。
試しに王籠から女王を出しましたが、一番人気の女王蜂は飛んで逃げてしまいました。若い女王は動きが早く飛ぶので厄介です。今後は牙切序に羽も切ることにします。
不人気の残り2匹の女王を群に導入し2日後に様子を見ましたが、1匹しか残っていませんでした。
↑もう一匹牙切女王を用意しました(写真の左側 群に慣らし中)。 今度は巣箱内で群を分けて各群へ女王を導入し、その後巣枠をくっ付けるという方法を取ることにしました。
↑巣箱の左側に2日慣らした女王を開放しました。 赤線を境界線にして巣箱内に2匹の女王蜂が居る状態です。 女王蜂同士を接触させないようにすれば、働き蜂を共有させた多王化は可能です(女王非接触型多王)。
↑女王蜂接触型の多王化にする為、巣箱内の2群をくっ付けました。 これで多王化すれば実験成功です。
3日後に合同した群の内部検査をしましたが、女王蜂は1匹になっていました。若い女王の多王化は不可能な気がしてきましたが・・・もう少し頑張ります。
今までの実験結果・文献調べ・今後の可能性を考えた結果、若い王のみ使った多王化は諦めることにしました。若王同士の排他性は生まれ持った性質なのでこれを人工的に抑えることは難しいと判断しました。
結局、既存の多王化技術を何もシンプルにする事ができませんでしたが、「これ以上シンプルにできない」という事が分かったので良しとします。
今後は交尾後6ヶ月以降の女王蜂を使うことにします。 1群で複数の女王を長期間ストックできる利点は多いので、色々試したいと思います。 今は若い女王(交尾後1~2か月)しか居ないので、秋ごろから実験再開予定です。
女王が6ヶ月経ったので色々試しました。 結果、無事に多王化できました。
女王を気絶させて牙アリと牙無しで攻撃性の差などを見ました。牙があると明らかに攻撃性がUPするという事が分かりました。
ガスで気絶させると15分ほど女王蜂の他女王蜂への攻撃性を無くすことができます。多分、気絶の影響で意識が戦闘モードにならないからだと思います。
王籠内で女王同士を接触させて攻撃性を見たりしました。 女王同士を狭い空間に長時間閉じ込めると、理由はわかりませんがどちらか一方が弱っていきます。
牙切女王蜂2匹の入った王籠を無王群へ預けている様子です。この群には外勤蜂が多く残っていたらしく、王籠から解放した女王蜂2匹は外勤蜂に刺されて死亡しました。
色々寄り道しましたが、正規の方法で多王化しました。 多王化させるうえで大事な項目は3つあります。 ①使用する女王蜂は年を取っているほど良い(個人的には1歳以上を推奨)。 ②女王の牙は全部切る。片方だけ切っても攻撃性が余り落ちないように感じた。 ③導入群には若い蜂群が良い(ここは改善できるかも)。
今回の多王化実験で交尾済み女王を20匹ほど失いましたが、もう少し簡易化の実験を進めたいと思います。
過去の実験記録はこちらになります。参考になれば幸いです。